睡眠不足はビジネスパーソンの大敵! 脳科学の専門家に聞いたベストな睡眠時間と快眠の秘訣

朝起きるのがつらい、頭がボーッとして仕事がはかどらない……、それはズバリ「睡眠不足」の影響ではないでしょうか? ビジネスパーソンにとって、睡眠不足は大敵。良質な睡眠がとれていないと仕事のパフォーマンスが下がるだけでなく、健康を害する原因にもなります。

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睡眠不足はビジネスパーソンの大敵! 脳科学の専門家に聞いたベストな睡眠時間と快眠の秘訣
朝起きるのがつらい、頭がボーッとして仕事がはかどらない……、それはズバリ「睡眠不足」の影響ではないでしょうか? ビジネスパーソンにとって、睡眠不足は大敵。良質な睡眠がとれていないと仕事のパフォーマンスが下がるだけでなく、健康を害する原因にもなります。

そこで、脳の神経ネットワークから人間の行動まで、マルチレベルな視点による研究を進める早稲田大学・研究戦略センター 枝川義邦教授に、「ベストな睡眠時間」と「快眠を得る秘訣」をお聞きしました。常にベストコンディションを維持したい方は必見です。

20代の平均睡眠時間は約7.5時間! じゅうぶんな睡眠をとってもダルい理由とは?


まずは近年のビジネスパーソンの睡眠事情を探りましょう。総務省が2011年に行った社会生活基本調査 では、20~30代の平均睡眠時間は以下のとおり。

20~24歳:7.56時間

25~29歳:7.43時間

30~34歳:7.37時間

35~39歳:7.23時間

全国の平均就寝時刻は23時15分で、最下位の東京都民の平均就寝時間は23時41分。ビジネスパーソンの人口がより密集する東京都民の就寝時刻がもっとも遅いのは、納得の結果といえるかもしれません。睡眠時間については年齢が上がるにつれ短くなっているものの、数値で見ると極端な睡眠不足ではありませんよね。ただよく聞くのは、「じゅうぶん寝たはずなのに体がダルい」という悩み。その理由は一体なんでしょうか?

「じゅうぶんな睡眠をとってもダルさが残ってしまう一番の理由は、『睡眠の質の低下』です。そして、睡眠の質の低下を引き起こすのは、心理的な不安が原因だと考えられます。たとえば、仕事や人間関係などに悩みを抱えていて不安が残ったまま就寝すると、睡眠の質が下がってしまうんです」(枝川義邦さん:以下同じ)

そもそも睡眠とは、「脳と体の休息」が一番の目的ですが、枝川教授いわく「疲労と疲労感(疲れを感じている状態)は別物」だそう。

「趣味に没頭しているときなどは、疲れを感じずに何時間でも集中できますよね。ただ、疲労感がなくても実際、体は疲労しているんです。そして、睡眠不足が続くと疲労感がたまりやすくなるとの調査結果も出ています。したがって、疲れを自覚していなくても睡眠はしっかりとるべきなんです」(同)

6時間睡眠は2日間の徹夜と同じ! ベストな睡眠時間は6.5~7.5時間


続いては気になる「ベストな睡眠時間」について。睡眠時間についてはさまざまな説がありますが、一般的には「6.5~7.5時間がベスト」だといわれているとのこと。これについては科学的な根拠があるそうです。

「睡眠は、レム睡眠(浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い睡眠)の2種類で構成されています。睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れ、およそ90分で1サイクル。そのため睡眠時間は、常に浅いレム睡眠の状態となる90分の倍数が理想的だといわれています。ただ厄介なのは、この90分サイクルには個人差があるということ。人によりプラスマイナス20分ぐらいのバラつきがあるため、実際には70~110分間のサイクルと考えなければなりません」(同)

とはいえ、70~110分の倍数であれば何時間でもいいわけではないようです。「6時間未満あるいは8時間を超える長い睡眠は、脳や体に悪影響が出る」と枝川教授。

「実は6時間睡眠を2週間続けると、『2日間徹夜したときと同じ脳波の状態になる』との調査結果が出ているんです。日常的に6時間睡眠で過ごしている人からすると、これは衝撃の事実ですよね。もちろん6時間よりも睡眠時間が短くなれば、なおさら脳の動きは鈍ります。また、7.5~8.5時間の睡眠を継続した人と6.5~7.5時間の人では、前者のほうが約20%も死亡率が高まります。これらの調査結果を踏まえると、睡眠時間は6.5~7.5時間の間がベストでしょう」(同)

さらに、ベストな睡眠時間で良質な睡眠をとったときに脳や体に起こる変化についても、解説していただきました。

「良質な睡眠をとって疲労を回復させると、集中力、判断力、記憶力の他に、モチベーションや自己効力感も上がります。自己効力感とは、課題など目の前にあるハードルを越えられると思える力。自信みたいなものですね。モチベーションと自己効力感のバランスがとれていると、課題の達成率がUPするという調査結果も出ています。あとは、免疫力を維持できるので風邪を引きづらくなるなどの健康効果も見込めます」(同)

今日から始めたい! 快眠を得るための7つの生活習慣


睡眠の質を改善すると、想像以上にうれしい効果があることが分かりました。最後に、快眠を得るための秘訣をご紹介します。まずは「睡眠不足の3つのタイプ」を知りましょう。

1、寝付けない

ベッドや布団に入っても、なかなか眠りにつくことができないタイプ。1度寝入ると、朝まで起きないのが特徴です。

2、早く目覚めてしまう

起床したい時刻よりも、早い時刻に目覚めてしまうタイプ。

3、途中で起きてしまう

トイレに行きたくなるなど、睡眠の途中で起きてしまうタイプ。

このような睡眠不足を起こさないためには、以下の方法を実践すると効果的だそう。どれも今日から始められる簡単なものばかり! ぜひ試してみてください。

1、理想的な睡眠時間を確保する意識をもつ


「基本的なことですが、睡眠は生きていくためになくてはならない生理作用です。『眠くなったら寝る』のではなく、『理想的な睡眠をとろう』と思わない限りは、良質な睡眠をとることはできません。ただし、『どうしても眠らなきゃ』と緊張してしまうのは逆効果です」(同)

2、快適な睡眠環境を整える


「こちらも基本的なことですが、まず寝る前に必ずお手洗いに行っておきましょう。また、快適に就寝できるような室温や薄暗さを保つとともに、リラックスできる香りに包まれるのもオススメ。五感のなかで唯一就寝中に機能しているのは鼻だけなので、香りの効果は絶大ですよ」(同)

3、眠る直前にパソコンやスマートフォンの使用を避ける


「ご存知の方も多いかもしれませんが、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの画面からはブルーライトが放出されており、これを浴びると眠気を誘う脳内ホルモン・メラトニンの分泌を妨げてしまいます」(同)

4、眠る直前の入浴・洗顔を避ける


「湯船に漬かると体の深部体温が上がり、この温度が下がってきたときに眠気を覚えるため、体温が高い間は眠ることができません。また、冷たい水を顔や体に浴びると目がさえてしまうため、これも眠る直前には避けましょう」(同)

5、夜食を控えめにする


「夜更かしをすると、夜中にお腹が空いてしまいますよね。どうしても空腹がガマンできないときは、サラダやお豆腐のような低カロリーのもの、あるいはホットミルクなどで済ませるといいですね」(同)

6、アルコール・カフェインの過剰摂取を避ける


「アルコールを摂取すると、興奮作用、抑制作用が順番に起こり、抑制が起こったときに眠くなります。ただ、過剰に摂取すると抑制のあとに再び興奮が現れるので、睡眠中に目が覚めてしまうことがあるのです。また、覚醒作用があるカフェインを摂りすぎると、当然眠りの質が下がります。個人差はありますが、夕方以降はカフェインの摂取を避けましょう」(同)

7、起床時刻を決め毎朝朝日を浴びる


「会社勤めをされている方は、自然と起床時刻が定まっていると思いますが、フリーランスなど自分でリズムをつくることができる方は、毎日起きる時刻が違うなんてこともありますよね。それも睡眠の質を下げる原因のひとつ。生物は皆『サーカディアンリズム』と呼ばれる1日のリズムをもっていて、これは『24.8時間周期で変動する生理現象』です。

実は人間のリズムは24時間より少し長いんですよね。夜更かしをするとこのリズムがどんどん後ろに崩れていくのですが、太陽の光を浴びるとリセットされる性質があります。よって起床時間を決めて、毎朝朝日を浴びるようにすれば体内のリズムが自然と整い、睡眠の質も上がります」(同)

まとめ


睡眠は、私たち人間にとって生理作用であり、ベストパフォーマンスを発揮するために必要不可欠なもの。ちょっとした生活習慣の改善を試みるだけで、睡眠の質を格段に上げることができるのです。加えて、寝付きを良くするためにはスマホなどを手放して「本で活字を読むこと」や「抱き枕などを抱いて安心感を得ること」も効果的だそう。

ついつい夜更かししてしまうという皆さん、今日から毎朝シャキっと起きられる生活習慣を取り入れてみませんか? 頭がさえるようになり、ビジネスがグンと加速するのを実感できるはず。

識者プロフィール


枝川義邦(えだがわ・よしくに) 早稲田大学研究戦略センター教授(早稲田大学ビジネススクール兼担講師) 東京大学大学院薬学系研究科博士課程を修了、博士(薬学)。早稲田大学ビジネススクール修了、MBAを取得。早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサーの初代認定を受ける。2014年より現職。脳の神経ネットワークから人間の行動まで、マルチレベルな視点による研究を進めており、経営と脳科学のクロストークを基盤とした執筆や研修も行っている。2015年度春の早稲田大学ティーチングアワード総長賞に選ばれる。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『「覚えられる」が習慣になる! 記憶力ドリル』(総合法令出版)など。NHK総合テレビ「記憶力UPゲーム シーホースパワー!」の解説役も務める。

※この記事は2016/10/11にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
《編集部》

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