CINRA広報“しおたん”に聞く、知られざる広報の役割

カルチャーポータルサイト「CINRA.NET」 をはじめとしたメディア事業や、Webサイト制作、イベントの企画運営など幅広い事業を手掛ける株式会社CINRA 。そんなCINRAの広報を務めるのが、塩谷舞(通称しおたん)さんです。

CINRA広報“しおたん”に聞く、知られざる広報の役割

カルチャーポータルサイト「CINRA.NET」 をはじめとしたメディア事業や、Webサイト制作、イベントの企画運営など幅広い事業を手掛ける株式会社CINRA 。そんなCINRAの広報を務めるのが、塩谷舞(通称しおたん)さんです。

大学時代に関西の美大生をつなぐネットワーク「SHAKE ART!」を立ち上げ、イベント企画、フリーペーパー運営から営業、編集まで幅広くこなしていたという塩谷さん。CINRAでもWebディレクターと広報を兼任するなど、枠にはまらない活躍をする彼女は、「広報の仕事は『この情報を広めて!』と言われて『分かりました!』と答えるのではダメ」と語ります。塩谷さんが考える広報の役割とは? 本人に直接お会いして伺ってきました。

3年目で、社内初の「広報」に


-大学時代はイベント企画からフリーペーパーの運営まで、さまざまな仕事に関わっていらっしゃったようですが、CINRAで広報の仕事をするようになったのはどのような経緯からですか?

「私はもともと、CINRAが運営するカルチャーサイト『CINRA.NET』の編集をしたいと希望して入社しました。記事編集は学生時代に独学で実践していたのですが、その分野を伸ばして、東京で一番のWeb編集者になるぞ!と勇んでいたんです(笑)。でも代表から『まずは2年間、編集者じゃなくてディレクターをやってみよう』と言われ、Webサイトの受託制作を行うクリエイティブ事業部に2年間在籍しました。その2年間を経て、視野も広がりましたし、良い意味で冷静になれたと思います(笑)。

入社してから分かったことなのですが、『CINRA.NET』などのメディア事業部は対外的に認知されているものの、私の在籍していたクリエイティブ事業部は、あまり存在を知られていませんでした。いわゆる制作会社って、クライアントの広告物を作るのが仕事なので、自分たちの認知度を広げていくのはなかなか難しいんです。

途中から入ってきた私にとっては、そのメディア会社としてのCINRAと制作会社としてのCINRAが分かれているのはもったいないと感じていて。それで代表と相談して、ディレクターから広報にジョブチェンジしました。代表も、会社の規模からして、自分たちのことを積極的に発信していく必要が出てきたと感じていたようです。そういうタイミングが重なって、『カルチャーを発信するメディアがあって、なおかつWebサイトの制作ができるCINRA』というふうに両方を包括して、広報をしていくことになったんです」

広報は「それ本当に?」的視点が必要


-なるほど、ご自身で会社に広報が必要だと提案したのですね。それでは、塩谷さんが思う、広報の役割とはなんでしょうか?

「私もまだ広報としての日が浅いので、何も偉そうなことは言えなのですが……広報の仕事って『この情報を広めて!』と言われて『分かりました!』と答えるのではダメだと思うんですよね。社内で出た意見に対して、『それ本当に?』的な視点を持つことが大事だと思います。

実際、社外で耳にするCINRAの印象って、社内で思っていることとは違う意見だったりするんですよ。でも、そういうズレって、社内で仕事に熱中していると、なかなか客観視できなかったりします。

自社の魅力を、いちばん響きやすい形で届けるためには、一度会社の構成要素を分解して並べてみて、冷静な目で選び出す力が必要なんじゃないかな、と思っています。さまざまな要素の中から『うちの強みはこれだ!』と抜き出す一つの編集力といいますか。

例えば、7月にリニューアルした自社サイトでは、スタッフページに力を入れています。CINRAの社員はみんな趣味趣向が色濃いので、社員自体をコンテンツにしてしまいました」

「他にも、過去に取材したアーティストさんの写真をトップページで使用させてもらっているのですが、これは『カルチャーの仕事が主軸にある』ということを一目で分かってもらうため。そうやって自社の『推しポイント』を提示した結果、よりCINRAらしいお仕事の依頼をいただくようになりました」

 

“会議祭り”で当事者の言葉を知る


-ただ会社の強みと思われているものを代弁するのではなく、本当に価値のあるものを選び出すことが広報には必要だと。とはいえ会社の魅力を分解する、というのはなかなか難しいことのようにも思います。具体的には何か方法があるのですか?

「あまりどこか一カ所にとどまらないことでしょうか。もともとWebディレクターだったので、ディレクターのことは一番詳しく分かってるし、まだ当事者でもあります。ですけど、そこにとどまると広報の仕方が偏っちゃったりするので、できるだけそこを離れて、社内を俯瞰してみるようにしています。社内ではCINRA.NET会議、CINRA.STORE会議、CINRA.JOB会議、ディレクター会議など事業部ごとにいろいろな会議があるのですが、その全部に出ながら状況を把握するようにしていて。全部に出ているので“会議祭り”みたいになっちゃうんですけど(笑)」

-会議に出ることでその現場の人たちの熱い思いを知ることができるのも、広報をするうえで重要そうですね。

「そうですね。メディアの事業でいうと、どういう考えを持ってみんながニュースを書いてるのかな、とか、どういう記事がCINRA.NETのファンの方々に響くのか、とか。社外の方と接するときに、そのあたりを詳しく話せると『あ、この人ちゃんと当事者なんだ』と認識していただけます。大企業だと、会社の中でも子会社みたいに分かれちゃって、縦割りで社内のここの部署のことしか知らない、ここの部署は知り合いもいない、みたいになってしまいがちで、すごくもったいないなと思います」

-なるほど。社内のそれぞれの事業を、当事者として語れる言葉を持っておくことが、広報担当者に必要なのですね。

自社だけでなく業界全体の広報をする


-塩谷さんは、Webコンテンツ制作の同業他社である株式会社LIGが運営するLIGブログで記事を書いていたそうですね。ある意味ライバルともいえる会社のメディアで記事を書くというのも、広報という立場上の仕事、という位置づけなのでしょうか?

「そうですね。単純に、社交が好きだから……ということもありますが(笑)、同業他社の方々との交流は、とても大事にしています。Web制作会社ってそれぞれに違った得意分野を持っているので、お互いの苦手とする部分を埋めるような付き合いができるし、業界全体で仕事をシェアすることができるんじゃないか、って思っているからです。各会社でリソースに限りはあるわけで、それぞれの強みを把握しておけば、もしCINRAに制作の依頼が来た場合も『そのお仕事なら、この会社さんが得意ですよ』といった話ができますよね」

-話を聞いていると、“CINRAの広報担当”というより“Web業界全体の広報担当”と言った方が正しい気がしてくるのですが…。

「たしかに、自社のことだけにとらわれず、業界全体の広報ができたらいいな、と考えています。クライアントさんに『取りあえずなにか困ったらCINRAさんに聞いてみよう』となってもらえるのが理想だと思っています。そうすれば、制作会社へのお仕事のミスマッチが少なくなって、結果としてみんなが自社の強みを磨ける、ハッピーな状況になるんじゃないかな、と思いますね」

-業界のなかでミスマッチをなくすことが、自社の強みを生かすことにつながると。そう考えると、業界全体の情報のハブのような役割を果たすことも、広報の役割だといえそうですね。

以上、塩谷さんが考える広報の役割を見てきました。広報に限らず、営業や経理、人事など、それぞれの業務内容を書いたマニュアルはあるはず。しかし塩谷さんは広報の役割を、どれも自分の頭で考え、導きだしてきたように思います。皆さんも普段の業務の常識を疑い、もっといい方法はないか、本当に必要な仕事は何かなど、あらためて考えてみるといいのではないでしょうか。


識者プロフィール
塩谷舞(しおたに・まい)/通称「しおたん」。大阪生まれ。京都市立芸術大学在学中に、関西の美大生をつなげるプロジェクト「SHAKE ART!」を創立。イベント企画や展覧会のキュレーション、アートフリーマガジンの発行を行う。株式会社CINRAに入社後、Webディレクターとして2年間の経験を積んだ後、広報職となる。

※この記事は2014/11/10にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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