バルセロナで働くアパレルショップ店員が見た、スペイン流「人生の楽しみ方」

未完の世界遺産「サグラダ・ファミリア」を筆頭としたガウディ建築のほか、星付きのレストランや有名なバルも数々ならび、グルメの街としても知られるスペインのバルセロナ。都心部にもかかわらずビーチまでもほど近く、地元の人々や観光客で連日にぎわいます。

バルセロナで働くアパレルショップ店員が見た、スペイン流「人生の楽しみ方」

未完の世界遺産「サグラダ・ファミリア」を筆頭としたガウディ建築のほか、星付きのレストランや有名なバルも数々ならび、グルメの街としても知られるスペインのバルセロナ。都心部にもかかわらずビーチまでもほど近く、地元の人々や観光客で連日にぎわいます。

今回はそんなバルセロナの街に降り立ち、2010年からアパレルの某セレクトショップで働く下地由維樹さん(29)にインタビュー。下地さんは6年間スペインで働くことで何を感じ、何を得たのでしょうか。

転職のきっかけは、中田英寿に憧れて出た旅だった


「私はもともと東京都の府中市で生まれ育ちました。父が国分寺で建設会社を経営しており、高校卒業後はそこで3年間働いていました。そして6年前にスペインに移住し、現在はセレクトショップの社員として働いています」



高校までサッカーに青春を捧げていた下地さん。高校時代に中田英寿選手の著書を読んでから、「いつか海外に行きたい!」と希望に胸を膨らませていたそうです。ファッションも好きだったことから、18歳のころ、初の海外旅行で、ファッションで有名なフランスやイギリス、ベルギーなどのヨーロッパをバックパッカーとして旅しました。


父親の会社で働きながらも一年に一度は1カ月の長期休暇をもらって、アジアとヨーロッパを中心にバックパッカー旅行を続けていたという下地さん。そんなとき、旅先のスペインで人生の転機となる出会いに遭遇しました。

「2010年、僕が23歳のころに、今働いているセレクトショップにお客さんとして訪れたんです。オーナーと仲良くなってその夜にバルへ飲みに行くことになり、意気投合して社員として働くことになりました(笑)」

下地さんが働くお店は、2005年にバルセロナにオープンした、日本人が経営するセレクトショップ。主にパリのコレクションで発表されたブランドの洋服を取り扱っています。オーナーのバイイング・センスは高く評価されており、下地さんのように、お客さんが世界中から洋服を求めて買いにやって来るそうです。沢尻エリカさん、ユマ・サーマンなどの有名人も多く訪れているとか。

2010年には、バルセロナで2店舗目がオープンし、下地さんはそのお店を任されることになります。言葉の壁についてはどう乗り越えたのでしょうか。

「最初の3カ月は、語学学校にスペイン語を習いに行きながら働いていました。ただ、お客さんも取引先のブランドも海外が多いので英語を使う方が多かったです(笑)」

昼休みは3時間!? スペインの「シエスタ」


下地さんの出勤時間は11時?22時30分。14時?16時の2時間は「シエスタ」と呼ばれる休憩時間があります。

「13時?16時ごろまでの最大3時間は、多くのお店や企業などが昼休みに入ります。ゆっくりと食事を楽しんで、昼寝をして、また仕事に戻っていく…という感じですね。ちなみに、スペイン人は食事を大事にしており、1日に5回(うち間食2回)食事をとります」


下地さんの日常は、店舗での接客をこなしながら、オンラインショッピングの管理業務、各ブランドとのやりとりをして21時に閉店。22時30分ごろまで雑務をこなして帰宅…と思いきや、「今夜はバルに飲みに行く予定」だと言います。

「スペインは外食文化ですね。海も近いのでシーフードも安いし、ランチでバルならビールも1?2ユーロ(約120?240円)、おいしい料理も5?6ユーロ(600円?720円)で食べられます。ディナーでも20ユーロ(約2,400円)あれば、おいしい食事とお酒が存分に楽しめますよ!」

バルは、スペインの社交場。陽気なスペイン人はよく話しかけてきてくれるそう。

「お酒が好きでよくバルに行くのですが、話しかけてきたスペイン人と『今度一緒に飲もう!』という話になって、すぐ友達になれることが多いです。スペインでは日本人のマナーの良さがとても評価されていて、部屋を借りるときも『中国人はダメだけど日本人は大歓迎』という話はよく聞きます(笑)」

労働者に優しすぎ!?なスペイン



次に、スペイン人と日本人の違いについて聞いてみました。

「日本人と違ってよくも悪くも適当です(笑)。時間や約束は守らないし、自己主張が強く責任を負いたがらないので、まず謝らない…。日本人って、自分が必ずしも悪くなくてもすぐ“ごめんなさい”って謝ってしまいますよね。でも彼らは自分のルールに従って生きている印象があります。

先日、電車の運転士がマドリードで電車を止めて帰ってしまったんです。『もう帰る時間だから帰る』と(笑)。日本じゃ考えられないですよね」

そんな自由なスペイン人の気質は、その国の風土にありました。

「スペインって、労働者の権利がとても強い国なんです。シエスタもそうですが、プライベートや家族と過ごす時間を大切にしている人が多いですね。

そのためか、失業率は約40%と非常に高いです。失業保険を受けている人のことを『パロ』と呼ぶのですが、1年間有効なので、1年間パロを楽しんで、また働く…ということを繰り返す人も少なくはないみたいで。しかし、スペインは過去に経済破綻しているので、若者の働き口が少ない(レストラン勤務などが多い)ことも問題視されています。

さらに言うと、スペインには400ユーロ(約4万8000円)以下の窃盗額であれば、軽犯ではなく軽微な窃盗とされ前科はつかない…という法律まであるため、スリなどの犯罪が多いです…」

「幸せになる方法」を知っているスペイン人



そんなスペイン人から、下地さんはとても大事なことを学んだそうです。

「スペイン人は本当に人生を楽しそうに生きています。朝からバルで飲んでいる人もいれば、家族で海岸線を走る電車に乗り、気に入ったビーチに下りて過ごしたり…。そんな景色を毎日見ていて、彼らは『人生の楽しみ方がうまい』と思ったんです。

ちょっとくらい人に迷惑がかかっても、『自分も迷惑をかけるけど、人からも迷惑をかけられているんだ、それくらい大目に見てよ』という感覚なんですね。何だか、とても人間的だなぁ…と感心してしまいました」

人生を楽しむスペイン人に感化された下地さん、それから「自分にとっての幸せとは何か?」とよく考えるようになったそう。今後は、ご両親の故郷である大好きな宮古島に奥さんと移住して、仕事を続けながらそこで暮らすことが夢だそうです。

最後に、海外で働きたいと思っている読者にアドバイスをいただきました。

「異国の地ですし不安はあると思いますが、迷うくらいなら絶対に行ってしまった方がいいです。なぜなら、環境が変わることで視野がぐんと広がりますし、さらに環境の振り幅が大きいほど人は成長できるからです。何より、若いうちなら、失うものより得るものの方が多いはずですよ」

まとめ


美しい建築物やアートにファッション、おいしいグルメまで楽しめることで多くの日本人が憧れるヨーロッパ。それらの文化をつくり上げてきたスペイン人たちは「人生を楽しむ方法」を昔から知っていたのかもしれません。

“失うものより得るものが多い”と下地さんが語る海外で働くということ。一生に一度きりの人生と今という時間、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール
下地 由維樹(しもじ・ゆいき)
1987年生まれ、東京都出身。中田英寿選手に憧れ、10代からバックパッカーで世界を旅する。旅の途中、洋服好きなことから訪れたスペインで日本人が経営する某セレクトショップのオーナーと意気投合し、2010年から同店に勤務。


※この記事は2016/12/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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