パラレルワークの先駆者! スカイマーク佐山展生会長の仕事論とは

最近本業のほかに、複数の仕事を持ちながら自分のキャリアを積んでいくパラレルワークという働き方が注目されています。しかし実際、複数の仕事を掛け持つのは大変なことだしどうなんだろう、と疑問に思っている方もいるのでは。

パラレルワークの先駆者! スカイマーク佐山展生会長の仕事論とは

最近本業のほかに、複数の仕事を持ちながら自分のキャリアを積んでいくパラレルワークという働き方が注目されています。しかし実際、複数の仕事を掛け持つのは大変なことだしどうなんだろう、と疑問に思っている方もいるのでは。

投資ファンド・インテグラル株式会社代表取締役の佐山展生さんは、同社が経営再建に参画されたスカイマークの会長を務め、さらには大学で教授も務めているパラレルワーカー。

「睡眠時間は3時間の日もある」というパワフルな佐山さんが、複数の仕事を楽しみながらまわしていく、その原動力はどこにあるのでしょうか?

日本一の航空会社を目指して


-投資ファンド・インテグラル株式会社の代表取締役パートナーである佐山さん。航空会社・スカイマーク株式会社が経営再建に乗り出したのを皮切りに、昨年9月からの新体制のもと、同社では会長を務められていますよね。

スカイマークの出資元はインテグラル、ANAホールディングス、日本政策投資銀行と三井住友銀行によるファンドの3者です。これら3者のバランスのなかで、この1年間、足場固めをしてきました。おかげさまで、今年2月以降ずっと80%を超える非常に高い搭乗率を維持し、2015年度も売上高700億円超、営業利益15億円超を達成しました。

安全性の向上はもちろんですが、特に定時出発率を重視し、5年ほど前までは80%程度だったものが、今年4月以降は92%ほどにまで向上。これは航空会社のなかでもトップクラスなんです。しかし“トップクラス”ではまだまだ。“日本一”にならないといけませんから、これからも顧客満足度日本一の航空会社を目指して努力していきます。

-会長として、経営再建とともに特に注力されたのはどんなことですか?

われわれ経営陣の仕事は、社員の皆さんが頑張ろうと思える会社にすることだと思います。顧客満足度は大前提として、「社員満足度日本一」を目指していきたい。社員の不満のほとんどは日々の業務から発生しますから、「こうしたらいいのに」という現場の声に耳を傾けるため、社員満足度向上委員会も発足させました。

(右上)左が発案者の益田機長。(下)吉田義男元タイガース監督ほかも参加いただき、「タイガースジェット」お披露目会。

社員満足度向上へ全社員向けメッセージも


-阪神タイガースとコラボし、「タイガースジェット」を運行するキャンペーンも行っています。こちらは社員からの発案だったそうですね。

1年ほど前、パイロットの方たちとの飲み会をやったときに、タイガースファンの方から提案を受けました。その後半年くらいの期間、阪神電鉄や阪神球団の関係者の方たちと交渉を繰り返し、今年5月からは2機のタイガースジェットが運航しています。

-会長という立場の方が、一般社員の飲み会に参加するのもなかなか意外な発想です。

ダブルヘッダーもありますよ(笑)。経営者が何を考え、また、日々どんなことをしているのか、社員から見えないといけないと思っています。そうした気持ちもあって、会長に就任してから毎週月曜日に、全社員に向けてこんな書面をメールでメッセージとして送っています。

(佐山さんが送信している全社員向けのメッセージ文書を見せていただく)

-すごい! 単にメールでメッセージを送るのではなくて、きちんと文書を作成していて、写真なんかも入っている……。これを週1ペースで作成するのは、なかなか骨の折れることだと思います。社員の方からレスがあったりもするんですか?

メッセージには、私の、会社・個人それぞれのアドレス、それから携帯電話の番号を記しています。最近は、週3通くらい返信が来るようになりました。

「佐山さんは毎日何やってるんだろう」なんて思われたくないですよね。顔も見ない、見かけてもしゃべる機会がない……ではダメだと思っています。常にこうしたことをやっているかどうかで、社員の皆さんの経営者に対する気持ちは全然違うものになると思っています。

中部国際空港のスカイマーク懇親会にて。みんなの笑顔がまぶしい!



パラレルなワーク、どれも新鮮で楽しい


-投資ファンドの社長であり、スカイマークの会長であり……。はたまた、一橋大学大学院国際企業戦略研究科、京都大学経営管理大学院では、それぞれ教授・客員教授も務められています。率直な疑問として、時間配分はどうなされているのですか?

生活はめちゃくちゃ不規則です。

例えば昨晩もお客さまとの食事会がありました。帰宅してとりあえず寝て、夜中にいったん目が覚めましたが、ちょっと頭が働かないので、少しだけ二度寝。それから3時くらいに起きて、その後は大学院の試験の採点を始めました。

このように時間はまったく不規則ですが、その変わりに新幹線で移動するときなど、スキマ時間があればすぐに寝てしまいますね。

-佐山さんはTwitterやInstagramでも日々の活動を投稿されていて、更新頻度がとても多いのに加え、投稿される時間も早いですよね。4時台の投稿なんかも拝見しましたが、それを聞いてとても納得がいきました。最近は「パラレルワーカー」という、複数の仕事をまわしていくような働き方が注目されていて、佐山さんもそれに近い働き方をされていると感じます。その原動力はいったいどこから来るのでしょう?

1つは、仕事もやりたいことをやっているからですね。趣味なんかも、誰かから「やれ!」と言われていないからこそ、楽しいし長続きする。それと一緒です。

もう1つは、それぞれの活動が新鮮だということですね。例えば、私の仕事も4つに分けて考えるとこんな感じです。


1. インテグラルの代表取締役 …これは、私のベースになっている仕事です。

2. スカイマークの会長 …これまでは経営者と話をすることが中心でしたので、同社会長として社員やお客さまと直接接する機会はとても新鮮で楽しいものです。

3. 一橋大学大学院教授 …社会に出た後、再び学ぼうとする、平均33歳くらいの方が通うビジネススクール。コラボ企画の縁もあって、タイガースの試合観戦にも一緒に行きました。

4. 京都大学客員教授 …こちらは一橋大学とはまた違って、学生さんは経済学部の3回生と4回生、MBAコースの大学院生です。こうした若い人との交流もまた、新鮮です。



こうして全部が別世界だからこそ、新鮮で面白い。フレンチばかり4回続けばさすがに飽きてしまいますが、和食も中華もイタリアンもあるからこそ、飽きずに続けられるものだと思います

佐山さんから見た20代の生き方は?


-なるほど。そうした交流のなかでは、幅広い年齢層と接する機会が多いと思います。佐山さんから見て、今の若い世代、特に20代の人たちをどのように感じますか?

どうも安定志向なのかな、と思いますね。「できないかもしれない」ということに挑戦したがらない傾向にあるような気がします。けれども「できるだろう」と思うことも成功したところで、達成感は得られません。

-その点、佐山さんは「できないかも」への挑戦の連続ですね。

いつも人から「アホちゃうか?」と思われてきたと思います(笑)。とはいっても、私も30歳までは安定志向でした。

-30歳の当時は企業勤めでしたよね。

30歳で「素の自分」の存在価値が大してないことに気がつきました。これではいけないと、まず司法試験を受けようと必死に勉強し、その後は新聞広告で縁あって33歳で三井銀行へ中途採用で入社しました。

-入社してからもニューヨーク大学でMBAを取得されるなど、着実にキャリアを積んでこられました。

会社に勤めて一生懸命に仕事をしていると、「やったら報われる」と思いがちです。でもよくよく考えれば、会社といえども自分の評価は“人”がジャッジしているのですから、いくら頑張っていても必ずしも評価されるとは限りません。そもそも「会社は理不尽」なものなんです。その理不尽さを是正できるのが優秀な経営者なんです。

頑張っていると、ついついずっと楽しくやっていける、と勘違いしてしまいます。例えば係長なり課長、部長という肩書きがなくなって初めて、「素の自分」が世の中では評価されるに値しないことに気づくんです。

背筋が伸びて堂々としている佐山さん。とても若々しく、エネルギーに満ち溢れている。



-佐山さんは30歳でそこに気づかれたわけですね。この記事の読者のなかには、これから「30歳」という一区切りを迎えるにあたって「もう30歳か……」なんてため息をついている人も多いかもしれません。


行動を起こすのに「30歳」なんて全然遅くはないですよ。

私がよく言うのは「今の年齢に10歳足して10年後をイメージしてみてください」ということ。「30歳」から見た「40歳」の世界は、まったく異なる世界が広がっているはずです。しかし実際に40歳になって30歳を振り返れば、むちゃくちゃ若い。

いくつになっても、10年後を思い描けば、今ものすごく可能性があり何だってできるはずなのに、「もう30歳」なんて考えていたらもったいないです。「まだ30歳」なんです。何かを始めようかなと思ったら、遅すぎることはありません。

まとめ


佐山会長のバイタリティーに溢れる働き方のベースには、「素の自分」を見つめ直すという過去の体験がありました。

ただ「安定」を求めるだけでは、つまらない人生を過ごしてしまいかねません。自分は何ができるのか、そして何がしたいのか。会社から与えられた役割をいったん外してみて、「素の自分」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール
佐山展生(さやま・のぶお)1953年京都府生まれ。72年、洛星高校卒業、76年、京都大学工学部高分子化学科卒業後、帝人に入社。87年、三井銀行(現・三井住友銀行)入社。94年ニューヨーク大学MBA取得、99年東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了博士(学術)取得。98年、代表取締役パートナーとしてユニゾン・キャピタル(株)を共同設立、2004年GCA(株)を共同設立代表取締役、08年よりインテグラル(株)代表取締役、15年よりスカイマーク(株)代表取締役会長。

※この記事は2016/10/06にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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