コルク佐渡島庸平の人生に影響を与えた4冊の本とは?

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』『バガボンド』……。20代の読者にとってもおなじみの漫画に携わってきた編集者として知られる、佐渡島庸平さん。

コルク佐渡島庸平の人生に影響を与えた4冊の本とは?

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』『バガボンド』……。20代の読者にとってもおなじみの漫画に携わってきた編集者として知られる、佐渡島庸平さん。

2012年に講談社を退職し、現在は漫画家・小説家などのクリエイターのエージェント会社・コルクの代表として活動しています。

これまで読者の人生を変えるような一冊を生み出し続けてきた佐渡島さん自身は、いったいどのような本から影響を受けてきたのでしょうか。今回は佐渡島さんの人生観に影響を与えた本と、自身の読書観について聞きました。

本探しのコツは「尊敬する人が面白いと思う本」を探すこと


─佐渡島さんは現在、どのような本を月に何冊ほど読んでいますか?

「出張などのまとまった時間を利用して、月に3、4冊ほど、会社を経営する上で役立ちそうな本を読むようにしています。最近では、中国のシャオミー(通信機器・ソフトウェアメーカー)についての本を読んでいます。新しい課題に直面したときに、こうした本から仕事人としての心構えやヒントをもらおうと思っているんです」

─小説はあまり読まないのでしょうか?

「コルクを起業してからというもの、まとまった時間を確保することが難しくなり、長編小説はほとんど読めていません。マンガや小説は、仕事として読まなくてはいけないものが大量にあり、それを読むだけでいっぱいいっぱいですね(笑)。

私が小説を読む際は、具体的な課題解決のためではなく、自分の心を遠いところにトリップさせることを目的として読むことが多いです。しかし短い時間では、長編小説を隅々まで堪能するのは難しいでしょうから、読めるようになるのはもう少し事業が安定してからになってしまいそうですね」

─20代の読者が面白いと思える本に巡り合うためのヒントがあれば教えてください。

「まず好きな作家や尊敬する人を見つけたら、その人が『面白い』と思うような本を探すのが一番良いと思います。好きな人が『面白い』ということは、その作品の中に自分が『面白い』と感じる要素が含まれているでしょう。

私が中学時代に本を探す際に参考にしたのは、『第三の新人』として知られた遠藤周作です。その後、村上春樹の影響も大きく受けました。村上春樹が敬愛し翻訳したレイモンド・カーヴァーやティム・オブライエンは彼の影響で読むことになりました。

今回は20代の方が良い本に巡り合うための参考に、私が人生観を形成する上で影響を受けた本をいくつか紹介します」

人間の“弱さ”を許容することを学んだ一冊


『死海のほとり』遠藤周作著 新潮文庫


「小学生のころ『沈黙』を読んで以来、小中学生時代は遠藤周作の作品にどっぷり浸りました。

遠藤周作の多くの小説の主題として描かれているのが、人間の根本的な“弱さ”なんです。主人公が、自分自身が強い人間なのか、弱い人間なのかを自問自答し、葛藤する部分に強く共感しました。

特に『死海のほとり』は、愛と信仰をテーマに描いていますが、自分自身の“弱さ”とどう向き合うかという物語でもあります。社会のシステムというものは、強い人間が勝ち残ることが当たり前とされていますが、僕は弱い人間がいてもいいと思っていますし、弱い人を許容する社会であってほしいと、この本をきっかけに思うようになりました」

“一度きりの人生をどう生きるか”と問いかけてくる物語


『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ著 千野栄一訳 集英社文庫


「ミラン・クンデラのこの小説は、ラヴストーリーとして知られていますが、一方で哲学的なテーマを孕んだ小説でもあります。

一度きりの人生のなかで、人はどのような選択をするのか、時間の有限性を意識しながら生きるということを問う物語として読むことができるからです。甘い恋愛小説の域にとどまらない、読み返すたびに発見がある名作です」

人間の性(さが)を描いた物語に真理が含まれている一冊


『儚い光』アン・マイクルズ著 黒原敏行訳 早川書房


「大学時代に読んだアン・マイクルズの小説も、遠藤周作、ミラン・クンデラと同じく、大人になっても読み返しています。翻訳も素晴らしいのですが、マイクルズの文章には、翻訳されても消えない美しさが含まれています。その美しさに何度も魅了されてきました。

『儚い光』の物語は、ユダヤ人の生き残りである詩人の男が、ずっと詩を書き続けるのですが、世界的に有名な詩人になっても心は満たされない……という話です。しかしそんな主人公もすてきな女性と出会い、肉体的にも精神的にも充足することで、詩を書くことをやめるのです。

この、シンプルに人間というものの性(さが)を描いた話にこそ、人間の真理が含まれているのではないのかと思っています」

楽しみながらお金の知識がつく漫画


『インベスターZ』三田紀房著 コルク


「手前味噌ですが本当の意味で一番自分が影響を受けた本は、これまで自分が編集したものなんです。小説の場合、同じ本を10回以上読み返すことってそうそうないじゃないですか。でも編集していると、初稿を読んでから発売されたあとに読むまで、10回は読むことになるんです。それでも読み返すたびに発見がありますし、自分の深い部分に刺さる実感があります。『テンプリズム』『鼻下長紳士回顧録』『宇宙兄弟』『マチネの終わりに』などなど、おすすめはたくさんあります。

コルクから発売されているもののなかで、ビジネス系の方々におすすめなのは、『インベスターZ』。『ドラゴン桜』を描いた漫画家の三田紀房さんによる、投資をテーマにした漫画です。北海道にある、学費無料の超進学校を舞台に、中学生である主人公が学校の運営資金を稼ぎ出す『投資部』の一員として奔走するという物語です。

先行きが不透明な時代だからこそ、漫画を楽しみながらお金に関する知識を蓄えていくのもいいかもしれません」

まとめ


いかがでしたでしょうか? 佐渡島さんの人生に影響を与えた本や読書観を参考に、皆さんも自分の“人生観をつくる一冊”を探してみてくださいね!


著者プロフィール


佐渡島庸平(さどしま・ようへい) 1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。2003年に立ち上げた三田紀房『ドラゴン桜』は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1600万部超のメガヒットに育て上げ、TVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説連載も担当。2012年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。


※この記事は2016/01/27にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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