お化け屋敷は接客業!? 最恐のオバケンが実践する最高のおもてなし術

「超面白い!」「まるでゲームの世界」「挑戦したけど無念のリタイア。怖すぎ!」

スタディ 雑学
お化け屋敷は接客業!? 最恐のオバケンが実践する最高のおもてなし術
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「超面白い!」「まるでゲームの世界」「挑戦したけど無念のリタイア。怖すぎ!」

いま、若者の間で話題となっているお化け屋敷があります。東京都杉並区方南町の住宅街を進むと、突如現れる「オバケン」。テレビ東京「モヤモヤさまぁーず2」やTBSテレビ「みのもんたの朝ズバッ!」で取り上げられるなど、注目度急上昇中のスポットです。

訪れる人々を恐怖のどん底に引きずり込むこのお化け屋敷。しかし、オバケンの代表、通称「オバケンさん」は、「お化け屋敷は接客業です」と言いきります。

お化け屋敷で接客って、どういうこと? 今回はキャリアコンパス取材班が「シックスイグジット」に潜入!「日本一接客のいいお化け屋敷」を目指しているというオバケンのおもてなしとはどんなものなのか、5つのポイントを体当たり取材で明らかにしました!


オバケン流5つのおもてなし!


■その1 提案したい物語の世界に引き込む


シックスイグジットは、6つの部屋それぞれで課せられるミッションを、次々と襲いかかる悪霊から逃げ切りながらクリアするという企画です。紹介動画はこちら。

取材班がホラープランナーの吉澤正悟さんにまず案内されたのは、3畳ほどの暗い部屋。手錠が壁にいくつか備え付けられています。


頭上にはモニターが。手錠で壁につながれると、モニターからある男の映像が流れ始めます。

モニターの男:はやくこの館から出ろ!!!!

吉澤さんいわく、この廃墟には殺人犯が潜んでいて、犯人が殺した人間の霊がさまよっている、という設定だそう。モニターの男は、少し前にこの館に迷いこみ、モニター監視室まで逃げていた人。その男が監視カメラを通じて参加者に脱出のアドバイスをくれるのです。

-- まるで映画のような設定ですね。

吉澤さん:ホラー映画の「SAW」から発想を得ています。参加者にはホラー映画の主人公になって楽しんでもらいたい。ホラー映画には例えばわなにかけられる、殺人現場で隠れる、夜の山道で車を運転するという場面がありますよね。シックスイグジットでも、6つの部屋で、お客さんはそれぞれのシーンを主人公になったつもりで楽しめるようになっています。

-- なるほど。商品に「物語性」のような情緒的な付加価値を加える「物語マーケティング」という手法がありますが、それに近いですね!


■その2 脱マニュアルが、温もりを伝える


吉澤さん:では、懐中電灯を持って進んでください。

最初の部屋を抜けると、待ち受けているのは入り組んだ迷路。しかもほとんど真っ暗なので、懐中電灯のわずかな明かりをたよりに手探りで進んで行くしかありません。

「あ゛あ゛あ゛あ゛…」

どこからか謎のうめき声も。

しばらく進むと、モニターの男らしき声が。 「おい、やばいぞ! どうやらやつらに気付かれたみたいだ!! 制限時間内にそこから逃げ出せ!」

アナウンス:35、34、33、32…。

-- ちょっと、なんですかこれ?

吉澤さん:もたもたしてると、お化けが追いかけてきます。カウント0になっちゃうとゲームオーバー。

-- ええええ!?

吉澤さん:ぼく、すごく怖がりなんですよ。だからこそ、「ここでこんなことされたら嫌だな」と自分が思うことをやっている。迷路でお化けが出てきて、行き止まりだったときの絶望感って半端じゃないじゃないですか(笑)。

しかも、参加者の動きは下の写真のように、モニターで常にチェックされているそうです。


アナウンスやお化けが出るタイミングなどは、お客さんの怖がり方によって調整。一般的なお化け屋敷ではマニュアル的な驚かせ方をするお化けが多いなか、オバケンではお客さんごとに対応を変えた「リアルタイム感」を大切にしているそう。マニュアルを度外視した対応には、温もりを感じますよね! お化けに温もりというのも変ですが。


■その3 最先端の技術を、さりげなく導入


迷路を抜けると、壁一面に血が飛び散り、壁面には解体された人間やホルマリン漬けの瓶が並べられた部屋に出ます。


おぞましい光景にぼうぜんとしていると、真ん中の支柱に備え付けられたヘッドホンに目が止まります。

吉澤さん:ヘッドホンをつけて、柱に手を当てると、音声が流れます。最後まで動かなかったらクリアです。

支柱の上部にはモーションセンサーがついていて、参加者の動きが分かる仕組みだそう。

吉澤さん:それでは、この部屋は体験できるので、よかったら。

-- いや、ちょっと待ってください!! 私こういうの苦手なので!!

吉澤さん:では…。(ガチャ)

吉澤さんが出て行ってしまうと、部屋は真っ暗に。するとヘッドホンから、聞こえるはずのない音が…。

-- ひぃー!!!!

…詳細は書くことはできませんが、自分しかいないはずの部屋に何者かの気配をはっきりと感じるから不思議。これは鳥肌間違いなし。

あとで吉澤さんに聞くと、「バイノーラルレコーディングという立体音響の技術を使っている」とのこと。実際にこの部屋をつくったあと、部屋に役者さんを入れてシーンを録音。どう歩くとか、どこで立ち止まるとか、シナリオに沿って部屋の中で音を録ると、あとで同じ場所で再生したときにどこで音が鳴っているのかまでリアルに再現できる、という技術だそうです。

最新の技術の情報は常に知っておき、必要であれば導入する。それも「こんな技術使ってます!」と公表していないところに、あの手この手を尽くしてお客さんをもてなそうという心意気を感じます。


■その4 ちょっと意地悪なほうが、ファンになってもらえる


なんとか第2の部屋をクリアすると、次は第3の部屋。そこにはなんと、1台の黒い車が。


モニターの男:エンジンをかけて進め!

男の指示通りに運転席のドアを開けてシートに座り、キーをまわすと「ド…ドドド…」とエンジンがかかります。アクセルをゆっくり踏み込むと、フロントガラスの前のスクリーンの映像がゆっくり動き出しました。


走っているのは夜の山道のよう。アクセルの踏む深さによって、映像が動くスピードも変化します。

この部屋では、車で夜の山道を通って別館に移動することがミッション。しかし簡単にはいきません。山道には霊がうようよ。参加者のいく手をあの手この手で阻みます。そんななか、参加者には頭を使うミッションも課せられるから難易度は倍増! 取材班もビビりたおしで、あえなくゲームオーバー。

吉澤さん:どうでしたか?

-- 怖すぎます。こんな恐怖のなか、頭を使ったミッションをクリアするのは大変ですね。そこにもお客さんを楽しませる工夫があるのですか?

吉澤さん:そうですね。オバケンは立地的にも悪いので、どうやってお客さんに来てもらおうかと悩みました。そこで、リピーターにたくさん来てもらうためにミッション性を高くして、なかなか最後の部屋までたどり着けないようにした。そして再びチャレンジできるリベンジ制度を設けました。クリアできなかったけれど、リベンジとしてもう一度訪れてくれる方の割合が50%くらいなんです。

-- なるほど。100%満足させてしまうより、ちょっと意地悪なミッションを与えて一度でクリアできないようにすることが、ファンをつくることにつながるのかも。スマホゲームにはまるのもこの「ちょっと意地悪なミッション」が理由かもしれないですね。


■その5 気配りがすべての基本にある


今回で見せてもらえたのはここまで。取材班はほっと胸を撫で下ろしました。

ところで、オバケンに行った方がよく言うのが「スタッフの方が親切だった」ということ。オバケンの代表であるオバケンさんによると、待ち時間に「怖いものが好きなんですか?」だったり、終了後に「どうでした?」と声を掛けるなど、気配りを怠らないといいます。

オバケンさん:僕としては「怖かったです」もうれしいですけど、「スタッフの人が良かった」と言われる方がうれしいですね。まずは「部屋は暑くないかな、寒くないかな」「つまらなそうにしてないかな」という気配りがあります。驚かせるのはその次ですね。

驚かせるのも、感動させるのも、笑わせるのも、どんな仕事でなんの商品を提供していても、基本にあるのはお客さんへの気配り。それを忘れてはいけないと気付かされました。


お化け屋敷は、人を幸せにする接客業


ここまで、オバケンのおもてなし術を見てきました。共通しているのは、お客さんにとことん寄り添っていること。でもなぜ、そこまでするのでしょうか。

「オバケンを運営しているのは、実は映像制作の会社なんです」と代表のオバケンさん。

「映像制作は小売りではないので、制作物を見た方に直接「ありがとう」と言ってもらえる機会が少ない。だからお金のありがたみが分かりづらいんです。そこで、誰もやっていないような方法でお金のありがたみを研究しよう、ということでお化け屋敷を始めました」


吉澤さんは、「お化け屋敷は人を怖がらせるだけじゃなく、人を喜ばせるもの。最終的には、人に幸せになってもらうお化け屋敷をつくるのが、オバケンのホラープランナーの役割です」と付け加えます。

「いまだに文化祭をやっているみたい」と語る二人の表情は、楽しさで溢れているようでした。お客さんに寄り添い、幸せを提供することが、自分の幸せにつながるのかも。「近頃仕事がつまらないなぁ」と感じた時こそが、誰かのためにおもてなし術を実践してみる時なのですね。

オバケンの詳細は公式ホームページにて。


※この記事は2014/10/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
《編集部》

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