幸福度は高いけど、仕事は実力主義! 火山と氷の国「アイスランド」の働き方

国民全体の3/4が「人生が満たされている」と感じており、世界幸福度ランキングでも常に上位を占める国、アイスランド。オーロラや白夜に間欠泉、世界最大といわれる露天風呂のブルーラグーン。多くの絶景と雄大な自然に囲まれ、日本でも人気の旅行先となっています。

スタディ 雑学
幸福度は高いけど、仕事は実力主義! 火山と氷の国「アイスランド」の働き方
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国民全体の3/4が「人生が満たされている」と感じており、世界幸福度ランキングでも常に上位を占める国、アイスランド。オーロラや白夜に間欠泉、世界最大といわれる露天風呂のブルーラグーン。多くの絶景と雄大な自然に囲まれ、日本でも人気の旅行先となっています。

そんなアイスランドに住む人たちの多くは、なぜ高い幸福感を感じているのでしょうか。

今回は、アイスランドの観光情報サイト「Guide to Iceland」で日本人向けにマーケティングやカスタマーサービスなどを担当している、ユン・クナさんに、アイスランドの幸福度が高い理由や、日本とアイスランドの職場環境や働き方の違いについて伺います。

埼玉県出身のユンさんは、2012年にアイスランド人の男性と国際結婚をしてアイスランドへ移住しました。ユンさんが見て、感じた日本との違いとは?


アイスランドってどんな国?


ヨーロッパの外れにある北欧の海洋に浮かぶ島国、アイスランド共和国。面積は10万3000Km2、北海道と四国を合わせたほどの大きさで人口は約33万人。そのほとんどが首都・レイキャビクに暮らしています。日本と同じように火山が多く、地熱による温泉が点在しており、電力も地熱発電でまかなっていることで有名です。

アイスランドの天気は一日の中で小雨が降ったり、晴れ間がのぞいたり曇ったりと、慌ただしくコロコロと変わることが特徴。

夏は日中でも気温は15度ほどまでしか上がらないので、ジメジメと暑い日本に比べると格段と涼しく感じられます。6~7月は太陽が1日中沈みきらない白夜が起こるため、夜中でもほんのり明るい空の色をしているのだとか。

一方、冬は日照時間が3~4時間程度と短いものの、島の周りを流れる暖流と火山活動の影響で気温はマイナス5度程度までしか下がりません。そしてこの時期は美しい星空とオーロラ鑑賞が楽しめます。


スヴィーズ(写真は食後に残った骨。実物は左のパンフレット写真)



もともと漁業が盛んなアイスランドの硬貨には魚の絵が描かれています。夏と冬の天候差がはげしい島国なので食料の確保が難しく、貴重な羊を無駄にしないために工夫された「スヴィーズ」(羊の頭を煮込んで半分にスライスしたもの)が伝統料理として有名です。

日本と比較してまず驚くのは物価の高さ。コンビニで売っている500mlのコーラは約400円、外食するとスープは一杯1,500円ほど、ビールは一杯約1,200円もします。外食は高くつくため自炊する人が多く、バーに飲みに行ったりはせずに、スーパーでお酒やお肉を買ってきて自宅でバーベキューをしながら友人と楽しい時間を過ごす人が多いそうです。飲料水は水道の蛇口からアイスランドのおいしい地下水が出てくるため、水を購入する人はほぼいないのだとか。

「アイスランドは街からすぐの場所に数々の滝や氷河、火山が点在していて、自然がとても身近にある国。自然が好きな人にとっては最高の環境だといえるでしょう。首都といえどもレイキャビクはとても小さな街で、日本のように大きなショッピングセンターやカラオケ店もなく、娯楽といえるものはとても限られています。旅行をする分には誰にでもオススメできますが、暮らす場合には人を選ぶかもしれませんね」(ユン・クナさん、以下同じ)


レイキャビクの街並み



アイスランド幸福説、4つのポイント


世界幸福度ランキングで、フィンランド、スウェーデン、デンマークなどと並び、毎年上位に入っているアイスランド。その理由として4つのポイントが挙げられるようです。


(1)「正社員」が存在しない、平等な雇用制度


「仕事に拘束されず、家庭や自分の生活を優先できるというのは、一つのポイントではないでしょうか。

日本と大きく違うのは、正社員や非正規雇用者というくくりがないことだと思います。雇用形態という概念が存在せず、フルタイムで働くか、短時間のみ働くかのどちらかしかありません。短時間勤務の人は1日8時間の固定給をベースに時給換算します。

それ以上の給料の違いは、役職や経験によって変わるのみですので、同じ能力、同じ仕事をしている人は同じ給料がベース。ただ、アイスランドでは交渉次第で給与が上がることもあるんです。ですので、最低賃金や平均的な金額は同一の仕事であれば同じですが、交渉次第で他の人より給与が多くなることも。こちらについては会社が一方的に決めたり、雇用体系によって変わったりするものではなく、あくまで従業員が自己主張して交渉するものです。

給料の差はあれど、有給や福利厚生、解雇や失業保険の権利についても同じ待遇がある点は、全員が日本の正社員の雇用の枠に入ると思います。しかし、正社員で働いていても、勤務態度や成果に問題があれば当然解雇の対象となります。

幼い子どもの面倒を見たいから、勉強をしたいからなどの理由で時短勤務を希望する場合、フルタイムのお給料や福利厚生の○○パーセントを受け取るという形になります。

私は小さな子どもがいますので、現在はフルタイムの50パーセントの時間で働いていますが、有休やボーナスもありますよ。

フルタイムの平均的な月収は40万円前後。職種にもよりますが、全体的な最低賃金は月収30万円程度と定められています。高校生のアルバイトでも時給1,500~1,700円くらいでしょうか。近年は観光客が増えているため観光業界の景気が良く、給料は全体的に上がっています。ゲストハウスやAirbnbの増加により住民用のアパートの供給量が少なくなったため、ここ数年で家賃が高騰してしまい、レイキャビクの中心地ではワンルームマンションの家賃でさえ月に10~20万円ほどです」


(2)福利厚生の手厚さ


「アイスランドの福利厚生は企業ではなく労働組合が定めていて、労働組合は観光業、大工、教師など職種ごとにあり、有給休暇の割合や給料の割合がそれぞれ決まっています。

毎月のお給料から積立金として組合費が差し引かれ、その中から助成金が出る仕組みです。例えば国の公用語であるアイスランド語の教室の費用について。アイスランドはヨーロッパからビザなしで移住もできるため移民も多いのですが、できるだけ多くアイスランド語を習得してもらう機会をつくることが主な目的だと思います。また、組合によっては健康維持のために毎月のジムの月謝などを出してくれるところもありますよ。

一般的に労働組合の力はとても強く、最低賃金や福利厚生については細かく決められています。労働者の権利などもそうですが、『昼食で外食する時間や費用の節約などを目的に、会社はお昼に温かい食べ物を提供する義務がある』というルールも。サンドイッチなどの冷たい食べ物はNGとされ、スープや魚、お肉料理、パスタなど、温かい一皿が必ず付きます。もちろん、提供される食べ物が好きか嫌いかという点もありますが、就業時はお弁当が不要です。これについては『食事は用意するから仕事に集中しよう』ということなのかもしれません」


(3)大学までの義務教育が無料


「アイスランドは、消費税率が25.5パーセントと世界でもトップレベルの高さですが、その分、福祉が非常に充実しています。妊婦健診や出産費用は無料ですし、病院も子どもの診察費用はかかりません。学費は義務教育が無料で、大学も1年間の学費が約7万5000円と日本と比べると格安です。

そもそも、アイスランドには大学がアイスランド大学(国立)とレイキャビク大学(私立)の2校しかなく、国民はどちらかに入学するため一部応募者が多い学部などを除き入学試験もありません。大学進学率は70パーセントと世界でも高く、その意欲に対して国も学ぶ機会を均等に与えているようです。アイスランドでは学歴よりも社会に出てからの実力が重視されるため、高校卒業後にフルタイムで1年ほど企業に勤めた後に大学へ入学する人も少なくありません。そのため仕事に対しての責任感が強い人が多いですね」


(4)女性が活躍できる社会


「アイスランドでは、大統領も首相も女性だった時代があり、国会議員の半数も女性です。出産後も社会復帰がしやすい環境が整っていて、子どもは生後6カ月から託児所に預けることができますし、時短勤務や在宅勤務も認められています。企業はフレキシブルに対応してくれるので、日本のように『前例がない』という理由でこれらを断られることはまずありません。

昔はとても厳しい自然の中で、男女関係なく全員働かなければ生きていけない環境だったそうです。ですので、アイスランドでは専業主婦といわれる女性はほとんどいません。育児休暇は除きますが、女性でも誰でも『働いていることが当然』という価値観があるようです。働いていないと『どうして働いていないの?』と思われたりすることも。

男女の格差が最も低い国だといわれてはいるものの、いまだに男性と比べて女性の賃金が低い傾向にあるため、女性たちは頻繁にデモを起こし続けています。その結果、今年の春には『企業の法的義務として、男女間の賃金に差がある理由を説明しなければならない』という法案が国から発表されました」

教育や充実した制度が整っているため、すべての国民に平等。一人ひとりが生活しやすい国になっているようです。


アイスランドで一番高い建物とされている、ハットルグリムス教会



全員が即戦力。仕事に対してはとてもシビアなアイスランド


一方、仕事で成果をあげることについてはかなりシビアなのだとか。

「怠慢な態度とまでいかなくても、会社の希望に沿う成果が出せていないということで解雇になる人はいますね。反対に自分の希望や勤務体系と実際違ったということで辞める人も多く、流動的です。

日本のような大手企業もありませんので、社内でのキャリアアップというのはあまり望めないかもしれません。そのため、自分の希望する職種や役職を目指して転職を繰り返すことは珍しくないですし、ヘッドハンティングも結構多いようです。

新卒一括採用ということもしないので、経験や学歴、年齢に関係なくさまざまな仕事に挑戦できますが、その分採用後にきちんとした成果を出さないと続けていくことは難しいといえるかもしれません。小さな国ですので企業が日本に比べ小規模ですし、少人数の中で全員が戦力にならないといけませんから」

そんなアイスランドでの働き方は、日本と比べて「合理的」といえそうです。

「働く制度そのものの違いもありますが、アイスランド人の国民性として『余計なことはしない』という面もあります。そもそも敬語も敬称もなく、誰に対してもファーストネームで呼びます。肩書きはあっても『気を遣わなくてはならない上司』というより『自分より責任範囲の広い人』というイメージ。

さらに、お店が過剰な包装をする、職場にお土産を持っていく、というようなこともしません。気遣いがないようにも感じますが、合理的です。上司や目上の人に気を遣って、『あれをしなければならない』『これはしてはいけない』と考えたりする必要がないので、とてもリラックスして本当にやるべきことだけに集中できます。会社に尽くさなければならないという考えもないので、こういう点ではプライベートを大事にしながら気楽に働くことができるでしょう」

ユンさん自身が驚いた日本との一番大きな違いは「家庭の事情を職場に持ち込むことができる」ことだそうです。

「アイスランドの企業では、月に2日間、病気のための有給休暇が認められていますが、子どもが病気であれば、保護者はさらに2日多く法律で定められた『子どもが病気のための有給休暇』を取得することができます。また夏は保育園や学校が夏休みになってしまうので、その間は子どもを仕事場に連れてくる人もいますね。

小学校のお迎えなどで早く帰らなければならない人も多く、企業は母親だけでなく父親にもこのようなときには当然のように早帰りを認めます。子どもが生まれれば、母親は6カ月の育休を必ず取得できます。父親も3カ月取得できますし、場合によってはこの3カ月を母親にあげることもできます(この場合、母親の育休9カ月となり父親の育休はなし)。育児は母親がするものだと考える人はいないので、自分も赤ちゃんの面倒を見ようと、積極的に育児休暇をとる父親が多いですね。母親か父親どちらかに育児が偏らないのもアイスランドならではといえるかもしれません」


水が地熱によって熱せられ沸騰し、蒸気圧がかかって噴き上げた間欠泉



相対的な価値観に幸せはない


「アイスランドでは自由に生きることと独立した生活を送ることの2点が大事だとされています。他人の目を気にしたり、人の生活にとやかく言うことはあまり好まれません」

最後に、こう語ってくれたユンさん。

誰もが平等であり、その誰かと自分を比べることなく自分らしい生き方や働き方を選ぶことで、オンリーワンの人生をデザインできる国。そんなアイスランドの風土と手付かずの豊かな自然環境が、アイスランドを「世界一幸せな国」と言わしめる理由のようです。




識者プロフィール


尹 久奈(ユン・クナ)
埼玉県出身。在日韓国人3世。
OLを経て2012年にアイスランド人の男性と国際結婚。日本からアイスランドへ移住。 現在、一児の母として子育てをしながら、アイスランドの観光情報サイト「Guide to Iceland」で日本向けマーケティングやカスタマーサービスなどを担当している。


※この記事は2017/10/06にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
《編集部》

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