みんな、できる事なら後悔がない人生を歩みたいはず。人気漫画家”かっぴー”氏に訊く、ソーシャル時代のキャリア論

「モノを作る上で感じるストレスは、モノを作ることで解消したかったんですよね。その方法が僕の場合は”漫画”だった。」

みんな、できる事なら後悔がない人生を歩みたいはず。人気漫画家”かっぴー”氏に訊く、ソーシャル時代のキャリア論

「モノを作る上で感じるストレスは、モノを作ることで解消したかったんですよね。その方法が僕の場合は”漫画”だった。」

こう語るのは、漫画家のかっぴーさんこと、伊藤大輔さん。怒涛の勢いで漫画を描き続け、まだ半年間の活動ながら、多くの人が共感できるFacebookでの”あるある”を描いた「フェイスブックポリス(現:SNSポリス)」を筆頭に、Webメディアに掲載された漫画は20本以上。そして漫画の書籍化も決まっています。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍し続けるかっぴーさんですが、漫画家として活動をすることになったきっかけ……それは同僚からの一言にあったのです。


【プロフィール】 1985年生まれ。広告会社のアートディレクター出身で、趣味で描いた漫画「フェイスブックポリス」がネットで大きな話題を呼んだ。「SNSポリス」「おしゃ家ソムリエおしゃ子」「裸の王様VSアパレル店員」など連載多数。Twitter@nora_ito

フラストレーションを発散するために描き始めた漫画。全ては同僚の一言から始まった


-- 現在、漫画家として活動されていますが、それまではどのようなお仕事を?

かっぴー:ずっと広告関係の仕事をしてきました。新卒で入社した東急エージェンシーという広告代理店ではアートディレクターとして、CMの制作を中心に仕事を行い、面白法人カヤックではプランナーとして企画系の仕事をメインにやってきました。(※現在は退職し、株式会社なつやすみを設立)

-- 漫画家になる”きっかけ”は何だったのでしょうか?

かっぴー:面白法人カヤックでは、全社員宛に日報を送ることがルールになっていて。転職したばかりのとき、「まずは社員の人に自分のことを覚えてもらわなければ」と思い、自分が描いた漫画を日報に勝手に添付して送ってみたんです。

「SNSポリス」より



そしたら、その漫画が社内ですごくウケて(笑)。最初は漫画をネットに公開する予定はなかったんですけど、同僚から「この漫画はネットに公開した方がいいよ」と言われ、いざ公開してみたら、想像以上の反響で……。そこから依頼が舞い込んでくるようになり、漫画家としての活動がスタートすることになりました。

-- きっかけは同僚からの一言だったんですね。ちなみに漫画って、もともと描かれていたんですか?

かっぴー:漫画自体はあまり描いたことがなくて、小学生の頃に少しだけ描いた経験があるくらいです。

-- えっ!?ちょっと意外でした!

かっぴー:ただ、「自分の好きなモノを作っていきたい」という思いは前から持っていて。アートディレクター、プランナーとして働く中で、ちょっとしたストレスは抱えていたんです。

自分が好きなモノだけを作るわけではないですし、たとえ自分が気に入っていたモノだったとしても、やり直さなければいけないこともありますし……。

そんな思いを抱えながら働いているときに、たまたま先輩と飲みに行く機会があって。そこで先輩と「モノを作る上で感じるストレスって、やっぱりモノを作ることで解消したほうがいいよね」っていう話をしたんです。

先輩の場合は、その方法が音楽で「夜な夜な作曲をして、ストレスを発散している」と。「自分の場合、何がストレス解消になるんだろう?」そう考えたときに浮かんできたのが漫画だった。


僕の漫画は絵コンテの延長。広告制作の仕事があったから、”今”がある


かっぴー:もともと、CM制作の仕事で絵コンテを描いていたので、自分にとっては漫画が一番身近だったのかもしれません。絵コンテの延長みたいな感じで。だから、ああいう絵になっているんですけど(笑)。自分のフラストレーションを解消するために、漫画を描き始めましたね。

-- 広告制作の仕事が漫画の執筆に活きている。

かっぴー:僕の漫画は全部、広告と作り方は同じ。インサイトをどう発見し、漫画に落としこむか。それだけの話なんです。

インサイトって、難しく聞こえるかもしれないですけど、僕はインサイトのことを、”あるある”だと思っていて。だから、自分の漫画は全て”あるある”をネタにした漫画になっているんです。

単純にアウトプットの方法が漫画になっただけで、インサイトを発見し、それを形にする。この一連の流れは広告の仕事と何ら変わりありません。ほんと、インサイトを漫画にした、それだけなんです。だからこそ、改めて自分の漫画を見ると、やっぱり絵コンテなんだなって思います。

-- 特に新しいことを始めた感覚はなかったと。

かっぴー:そうですね。何か新しいことを始めたわけではなく、自然と今までのノリで漫画を描いている。そんな感じです。

-- とはいえ、仕事をしながら漫画を描くのって大変じゃなかったですか?

かっぴー:最初は大変でしたけど、まぁこの仕事って、常に忙しいんで(笑)。忙しいことに慣れちゃったので、もう何も思わないですね。

人生の中で一番忙しかった広告代理店での仕事と比べれば、働きながら漫画描くっていうのは、別に全然忙しくない。あの頃は今の比ではないくらい、たくさんのアイデアを考えて出していたので。もちろん、漫画を描くスピードも速くなってきたことも一つの要因ですね(笑)。

ソーシャルの時代は今から始まる。やりたいことが”できない理由”はどんどん無くなっていく

 


-- ストレス解消のために描いた漫画が、結果的に自分の”職業”になった。

かっぴー:5年ぐらい前から、ずっと「ソーシャルの時代だ」って言われてたじゃないですか。でも、僕は今こそソーシャルな時代が始まると思っていて。

今までは、ただSNSがあっただけで、ソーシャルな時代ではなかった。でも、今は「note」を筆頭に色々なプラットフォームが出揃ってきていて、ネットが浸透しつつある。

それこそ自分の場合は、本当に顕著で。どこの誰だか知らないやつが、Webで漫画をアップしてみたら、多くの人が見てくれて話題になるという経験をしたことで、やっと「ソーシャルの時代が始まったんだな」と思いましたね。

-- これからがソーシャルの時代であると。

かっぴー:そう思います。これからは、人それぞれ持っている「やりたいけどできない」という理由がどんどんなくなっていくと思っています。例えば、「初期投資ができない……」という理由もどんどん解消されていくだろうし、「コネがなくて……」といった理由もソーシャルで解決できる。

もう"やらない理由"がなくなってきている時代になってきているんです、だからこそ、思うのかもしれないですね、何でやりたいことをやらないのだろうと。

-- 確かに、気持ちさえあれば何でもできる。そんな状態になってきていますね。

かっぴー:やってみてダメだったら、何でダメだったか、考えて、やり直せばいい。人それぞれ、"やりたいこと"ってたくさんあると思うんですけど、今の時代、リスクがあるチャレンジってそんなにないですよね。会社を作るのだって、全然リスクないですし。

たまに勘違いした人がいて、「ネットに投稿して滑ったらどうしよう……」という人がいるんですけど、滑ったら、誰にも見られないで終わるだけ。だから何も心配する必要はないんです。”やりたいこと”があるなら、まずは行動に移してしまえばいいと思います。

「何かやりたいけどな……」が一番どうしようもない。やるかやらないか、どっちか決めればいい!

 


-- そう考えると、本当にリスクがない時代ですね。その状況で、どうやったら一歩踏み出すことができるのか、かっぴーさんの考えを最後に聞かせてください。

かっぴー:僕は、死ぬまでやらないんだったら、別にやらなくていいと思うんです。ただ、おっさんになってから、「本当はこんなことがやりたかった……」っていう人生はすごく悲しいじゃないですか。

いまだに高校生の頃の僕の恩師が授業で話してくれたことが忘れられなくて。僕がちょうど美大に行こうかどうか考え始めたときだったんですけど、先生がこんな話をしたんです。

「僕のおじいさんが先日亡くなったんです。病院で、亡くなる直前……もうボケてるし、いつの時代の話をしているのかもわからない。そんな状態だったんですけど、「本当は美大に行きたかったんだ」そう言ったんです。今まで子どもにも孫にも一言も話したことがないのに……。」

その話を聞いて、その人の人生は間違っていなかったと思うんですけど、ちょっと悲しいなと。出来るものなら、後悔がない人生を歩きたいじゃないですか。だから、自分ではどうにもならない理由があって”やりたいこと”ができないんだったら、きちんと諦めることが必要だし、やるならとことんある。それしかない。「何かやりたいけどな」っていうのが、一番どうしようもない状態。やるかやらないか、どっちか決めた方が幸せな人生を送れるのではないかな、と僕は思います。


(取材・執筆:新國翔大)


※この記事は2016/11/04にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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