初任給をもらう前に知っておきたい! 給与明細のチェックポイント

5月は、多くの会社で初任給が支払われるタイミング。新入社員にとってはうれしい時期ですね。しかし、初任給が銀行口座に入金されたことを確認しただけで、満足してはなりません。入金された金額が本当に正しい金額だったのかを含め、確認することが重要なのです。

お金 ふやす
初任給をもらう前に知っておきたい! 給与明細のチェックポイント
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5月は、多くの会社で初任給が支払われるタイミング。新入社員にとってはうれしい時期ですね。しかし、初任給が銀行口座に入金されたことを確認しただけで、満足してはなりません。入金された金額が本当に正しい金額だったのかを含め、確認することが重要なのです。

そこで今回は、社会人が知っておくべき給与明細の基本的な読み方を、社労士の榊裕葵さんに教えてもらいました。


給与明細をきちんと読み解く重要性とは


給与明細とは入金された金額が正しいかを確認するためにチェックすべきもの。

給与明細に記載されている振込額と、実際に入金された金額が一致しているかを確認することはもちろん必要ですが、それだけではなく、給与明細に記載されている金額が、正しい給与計算に基づいて算出されているものなのかを確認することも忘れずに行う必要があります。

もし給与支給日になっても給与明細が発行されなかった場合は、会社に給与明細を発行してもらうよう請求をしましょう。

所得税法に次のような定めがあり、給与明細の発行は会社の義務となっています。


居住者に対し国内において給与等(中略)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより(中略)必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。

(所得税法第231条1項)


法第231条第1項に規定する給与等(中略)の支払をする者は、同項の規定により、次に掲げる事項を記載した支払明細書を、その支払の際、その支払を受ける者に交付しなければならない。

1.その支払に係る法第231条第1項に規定する給与等(中略)の金額

2. 前号の給与等(中略)につき(中略)徴収された所得税の額(以下省略)

3. (所得税の過納があった場合)還付した金額

(引用)所得税法施行規則第100条


また、厚生労働省も、通達において給与明細に記載されるべき項目について次のように指示を出しています。


(1)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

(2)源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額

(3)口座振込み等を行った金額

(昭和50.2.25基発112号)


「所得税法」「財務省令」「厚生労働省通達」をまとめると、給与明細に記載されるべき項目は「支給額」、「控除額」、「手取額(振込額)」の3つということになります。また、実務上は、残業代や欠勤控除などの計算根拠として「勤怠」に関する項目が記載されることが多いです。

具体的なチェック項目は以下で述べますが、給与明細をきちんとチェックすることで、手当の払い漏れや、根拠のない天引きなどがなされていないかを確認することができ、本来もらうべき給与を正しく受け取れているかを知ることができるのです。


給与明細の中で見るべきポイント


それでは、給与明細を見るときのチェックポイントを具体的に説明していきましょう。見るべき項目は「支給額」と「控除額」の2つです。

◎「支給額」のチェックポイント



1:基本給や手当の額が合っているか

賃金、勤務時間、休日などの主要な労働条件については、労働基準法で書面による明示義務が定められていますので、入社の際に、労働条件通知書や雇用契約書などで、基本給の額や、どのような手当が付くのかなどが示されていると思います。

あらかじめ示されていた賃金と、実際に初任給として支給された賃金の内容に相違がないかをチェックしましょう。

2:時間外手当の計算が正しいか

新入社員であってももちろん、所定労働時間を超えて勤務した場合は法律上、時間外手当が発生しますので、時間外手当の支給漏れがないかを確認してください。

月給制の場合の時間外手当は、次のように計算します。


<前提条件例>

基本給18万円

営業手当2万円

通勤手当2万円(時間外手当の計算の基礎には含まない)

年間休日120日

1日の所定労働時間8時間

<時間外手当の単価>

(18万円+2万円)÷{(365日-120日)×8時間÷12か月}×1.25倍≒1,531円


月給を年間平均の月当たり所定労働時間で割って、時給換算した場合の単価を出し、そこに法定割増率の1.25倍を乗ずるという計算になります(ただし、就業規則で1.25倍より高い割増率が定められている場合は、その割増率で計算)。

例えば、4月に20時間の時間外労働を行った場合は、時間外手当の額は1,531円×20時間=30,620円となりますので、給与明細に記載された時間外手当の額と突き合わせ、正しい額の時間外手当が支給されているかを確認してください。

なお、基本給に時間外手当が含まれている場合は、労働条件通知書や雇用契約書の基本給の欄に、「基本給には○時間分の時間外労働手当を含む」と書かれているはずなので、実際の時間外労働時間数が、基本給に含まれている時間数(または額)の時間外手当を超える場合は、超過分の差額が支給されているかを確認しましょう。

併せて、「勤怠」の項目で時間外労働の時間数が示されている場合は、実際に時間外労働を行った時間数に対してカットがされていないかも確認をしてください。

◎「控除額」のチェックポイント



1:法定控除項目が正しく控除されているかどうか

法定控除項目には、「雇用保険料」「健康保険料」「厚生年金保険料」「所得税」が含まれます。それぞれの項目の金額が正しいかの検証までは、かなりの専門知識が必要なので、ここでは説明を省きますが、これらの項目について、まんべんなく控除がされているかを、まずは確認してください。

もし控除がされていない項目があった場合は、会社にその理由を確認するようにしましょう。

控除がされていなかった場合、「手取りが増えてラッキー」と考えるのではなく、控除がされていないということは、これらの保険に会社が加入手続きをとってくれていない可能性があり、将来退職するときの失業保険の受給や、老後の年金額などに影響する場合がありますので、必ず確認をしてください。

新卒入社の場合、正社員としての無期雇用で入社することが多いと思いますが、無期雇用の場合、雇用保険、健康保険、厚生年金は、入社したその日(4月1日)から法律上強制加入となります。

「社会保険は入社後3カ月過ぎたら加入させる」とか「試用期間中は社会保険に加入させない」というような運用をしている会社も実務上はあるようですが、法律上正しい取り扱いではありませんので、入社日から社会保険に加入手続きをとってもらうよう、会社と交渉をしたほうがいいでしょう。

2:根拠のない控除項目がないか

「雇用保険料」「健康保険料」「厚生年金保険料」「所得税」といった租税公課は、法律上控除が認められたものですが、「労働組合費」や「社員旅行積立金」のように、会社独自の控除項目を設ける場合は、会社と社員代表が「労使協定」という書面を取り交わす必要があります。

会社独自の控除項目がある場合は、入社時に、例えば「当社では毎年10月に社員旅行があるので、月5,000円を労使協定に基づいて天引きしています」というような説明が必要なので、まったく説明がなかった項目で控除が行われていた場合は、どのような根拠に基づいて控除を行ったのか、会社に確認をしてください。


給与明細は保管しておくべき?


最近は、Web上で給与明細をダウンロードするというスタイルをとる会社も増えましたが、給与明細は少なくとも2年間は保管するようにしてください。

後日未払いの賃金が発見された場合、賃金債権の時効は2年ですが、裁判上などで請求を行う場合、証拠として給与明細が必要となります。また、引っ越しをする場合に、直近数カ月分の給与明細の提示が求められるというように、日常生活において給与明細が必要となる場合もあります。


まとめ


いかがだったでしょうか。新社会人の皆さんはもちろんのこと、給与明細をしっかりと読む習慣がなかったという人も、ぜひあらためてチェックしてみてください。

もし、給与明細に間違いがありそうな場合は、会社に対して確認をするようにしましょう。通常であれば、総務部や人事部の担当者が理由を説明し、間違いがあれば訂正をしてくれるはずです。

万一、取り付く島もないような対応をされた場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談をしましょう。会社との関係が悪化することを懸念するかもしれませんが、ここで声を上げなければ、今後もずっと不利な条件で働かなければならなくなってしまう恐れがあります。

労働基準監督署に指導をしてもらっても改善がされなかったり、逆に報復的な対応をされたりした場合は、退職を検討することも選択肢の一つ。今年度は、第二新卒採用に関する助成金も新設され、例年よりも第二新卒採用に積極的になる企業が増えることが期待されているので、労務管理に問題のある会社で心を痛めながら働くよりも、心機一転して就職活動をやり直すことのほうが長い目で見た場合、良い選択肢である可能性は高いでしょう。

識者プロフィール
榊裕葵(さかき・ゆうき) 特定社会保険労務士(あおいヒューマンリソースコンサルティング代表) 上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。

※この記事は2016/05/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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