溺れたりアゴが外れたり…ゆるキャラは命がけ!? スーツアクターの求人票

気になるあの仕事を、求人票形式で紹介する「◯◯の求人票」シリーズ。「サッカー審判員」「プロYouTuber」「データサイエンティスト」に続き今回お届けするのは、ゆるキャラブームでにわかに注目を集める「中の人」、“スーツアクター”の仕事です。

溺れたりアゴが外れたり…ゆるキャラは命がけ!? スーツアクターの求人票

気になるあの仕事を、求人票形式で紹介する「◯◯の求人票」シリーズ。「サッカー審判員」「プロYouTuber」「データサイエンティスト」に続き今回お届けするのは、ゆるキャラブームでにわかに注目を集める「中の人」、“スーツアクター”の仕事です。



今回は「スーツアクター養成カリキュラム」を開講する「NSC(ニュー・スター・クリエイション)吉本総合芸能学院」の担当教師であり、KTVのトーク番組『さんまのまんま』の着ぐるみ「明石家まんま」としてレギュラー出演している岡崎薫さんに、スーツアクターの仕事について直撃取材! その知られざる仕事の内容を、求人票形式でまとめました。

■職業名:スーツアクター
■仕事内容:テーマパークやキャラクターイベント、キャンペーン、TV、映画の出演。コマーシャルキャスト依頼
■平均的な1日労働時間:拘束3~5時間
※仕事の内容により異なります
■平均的な年収:一般的な相場はありません
■求められるスキル、経験:基本的演技力、体力、集中力、想像力、一般常識、サービス精神
■こんなひとに向いている:黒子に徹することができる、ユーモアのあるひと


ゆるキャラブームで高まる需要


――最近はゆるキャラをよく見かけるので、スーツアクターと聞くと「ゆるキャラの中の人」というイメージです。今と昔ではスーツアクターをめぐる事情は変わったのでしょうか?

岡崎:あくまでも個人的な考えですが、昔は特殊なタレント(スタントマン、声優、殺陣師のような)として扱われていたと思います。存在を一般にまで知られるようになったのは、ゴジラやNHKの子ども番組がキッカケです。

その後、仮面ライダーやロボコン等、キャラクターが主役の番組が始まり、スーツアクターがスタータレントとして認識されるようになりました。

今はゆるキャラブームで爆発的にキャラクターの数が増えたことに伴い、プロ・アマ問わずスーツアクターが求められるようになってきています。

暑い重いは当たり前。誰でもできるわけじゃない


岡崎:いまのスーツアクターには“演技力”が求められているといえるでしょうね。テレビやテーマパークは別として、ゆるキャラと呼ばれるキャラクターの中の人はアルバイトや関係者が便宜上やっていることが多いです。

それは、キャスティング側に「誰でもできる」という考えのひとが多くいるため、スーツアクターの演技能力が軽視されるようになったからです。

しかし、断言できるのは、売れているキャラクターたち(ゆるキャラも含め)のアクターは、少なくともアルバイトじゃないということです。ますますキャラクターが増え、競争が激化している現状を見ると、今後はより演技力のあるアクターが求められていくと考えられます。

――スーツアクターの演技とは具体的にどのようなものでしょうか?

岡崎:役者のスキルと同じです。基本的にキャラクターは喋りませんが、それは声を出さないだけで、頭の中ではせりふを喋っています。

動きにしても、よりそれらしく見えるパントマイム的能力も不可欠です。演じるキャラクターによってさまざまですが、ダンス、アクション、スタントなどのスキルも必要になる場合もあるでしょう。

あとは、テレビ、舞台、イベント、コマーシャルなど、仕事の内容によって表現方法が異なってくるので、表現の使い分けを身に付けることも必要でしょうね。

――演技力の他に、スーツアクターに必要なスキルはなんでしょうか?

岡崎:スーツアクターを目指すひとから「暑くないですか?」「重くないですか?」「息苦しくないですか?」といったことを聞かれます。しかし、重い着ぐるみを着ているわけですからそんなことは当たり前です(笑)。

つまり備えておきたい基本スキルは、さまざまな悪条件を観客に感じさせない体力やフットワークだといえます。

でも、着ぐるみの中は想像以上にしんどいんですよ。そのため、まず並外れた集中力が必要でしょうね。また、視界が良くないので周りの空気を読む想像力。ひとを嫌な気分にさせないための一般常識などが必要です。

それら総合的な能力と併せて“人を楽しませるサービス精神”を持っていなくてはいけない。つまり、スーツアクターを目指すなら、頭も体もフル活用できるエンターテイナーでなくてはいけないということですね。

お給料は歩合制


――なかなかハードな仕事だということが分かりました。そこで気になるのはスーツアクターのお給料事情です。年収の相場などはあるのでしょうか?

岡崎:収入はひとによってまったく異なります。アルバイトの方は仕事量も限られますし、プロのような技量も求められていないので、普通のアルバイトよりもちょっと良いくらいです。

またプロとして活動してる人も、実力やキャリア重視の業界なので、受け取る報酬にはばらつきがあります。ただ、テレビなどでレギュラー出演していたり、テーマパークやスポーツチームマスコットに入っているアクターは、普通に生活できるくらいもらっているでしょう。

もちろん、超有名キャラのアクター(例えば、あの喋るご当地ゆるキャラ)はとんでもない収入だと思います。

笑顔のキャラの中で、アクターは命がけ


――スーツアクターという仕事を選ぶ上でのメリットとデメリットを教えてください。

岡崎:アクター(俳優)という側面で語るなら、メリットは他の俳優と比べ、顔や年、性別を問わずいろいろなキャラクターの仕事ができるということです。

デメリットは誰が演じているか分からないので、周りから認められにくいということでしょうね。それでも、無名だったキャラクターが有名になっていくとうれしいものです。現在レギュラー出演している『さんまのまんま』などがそうです。

――大変なことはなんでしょうか?

岡崎:こればっかりは、「楽しい」の100倍くらいあります(笑)。特に大変なのは、体を張ってでも楽しませなくちゃいけないことでしょうね。

僕自身も危ない経験はいっぱいしました。ヒーローもののアクションで本当に殴られてアゴが外れたり、ウケ狙いで舞台の前にあるプールに飛び込んでしまい、水を含んだキャラクターがあまりに重く溺れかかり危うく死にかけたり。命がけのときは結構あります。

さらに悲しいのは、こっちの事情などおかまいなしで、キャラクターたちはどんなときもいつもニコニコ笑っているということです(笑)。

今後はプロとしての資質が問われるようになる


――どのような道をたどればプロのスーツアクターになれるのでしょうか?

岡崎:今は即、戦力になる人材が要求されるので、それなりの養成機関を持っている事務所か、キャラクター劇団に入って経験を積み、プロを目指すのがよいでしょう。

スーツアクターはどのような人にオススメの仕事ですか?

岡崎:スーツアクターは自分ではなくキャラクターが主役なので、あくまで黒子に徹することができる人に向いているといえます。また、どんなアホらしいことも楽しめる、ユーモアのある人も向いているでしょう。

――なるほど。最後に、今後スーツアクターという職業はどのように変化していくと思いますか?

岡崎:“ゆるキャラ”がブームになったのは、演じるアクターの“ゆるい”ぎこちなさも要因だったと思います。でも、そろそろお客さんの目も肥えてきて、スーツアクターのレベルを評価するようになってきました。

キャラクターの数は今後も減らないと思いますが、誰でもスーツアクターになれるという時代は終わり、今後はプロとしての資質が問われていくでしょう。

あなたも人気キャラになれる?


体力的にも精神的にも厳しい職業ではあるようですが、キャラクターを生かすも殺すもアクター次第。あなたもスーツアクターになって、大人から子どもまで愛される人気キャラに、魂を吹き込んでみてはいかがでしょうか?

 

識者プロフィール


岡崎薫(おかざき・かおる/本名:山出輝明) 昭和29年1月6日生まれ。大阪府出身、兵庫県在住。大阪デザイナー学院・グラフィック科卒業。在学中に劇団を結成し、演劇活動を開始。また、演劇活動の資金稼ぎにキャラクターショーのアルバイトをはじめる。それが好評で朝日放送 よしもと新喜劇「あっちこっち丁稚」に犬の伝次郎役、関西テレビ「さんまのまんま」のまんま役に抜擢される。現在はよしもとNSC大阪・東京 スーツアクター・カリキュラム講師、テーマパークステージショー企画・演出、博覧会ステージの演出、キャラクターデザイン、キャラクター制作等、幅広く活動を展開している。

※この記事は2015/08/28にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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