12人に1人、見かけないのはなぜ? 20代が知っておきたいLGBTのこと

性や人種、価値観の多様性を認め、さまざまな人材や働き方を受け入れようという「ダイバーシティ」。近年、耳にすることの多いこの言葉ですが、その流れにあわせて「LGBT」という単語を目にする機会も増えてきました。

スタディ 雑学
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性や人種、価値観の多様性を認め、さまざまな人材や働き方を受け入れようという「ダイバーシティ」。近年、耳にすることの多いこの言葉ですが、その流れにあわせて「LGBT」という単語を目にする機会も増えてきました。

一般的にレズビアンやゲイといった性的少数者の総称として使われているLGBTという言葉、詳しく説明できるという人も、なんとなく聞いたことがあるという人もいるでしょう。中には「自分には関係ない」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、調査によればLGBTの割合は12人に1人。これは左利きの人や、AB型の人とだいたい同じ割合です。左利きやAB型の人は身近にいるのに、LGBTの人には出会ったことがないと感じるのはどうしてでしょう? そう考えると、少しずつ考えるべき問題が見えてきます。

そこで今回は、企業向けにLGBT研修を実施している株式会社Letibee(レティビー)の役員、榎本悠里香さんにお話を伺いました。LGBTの方が会社で感じていることや、実際に非当事者が理解を深めるためには私たちはどうすべきかについて教えていただきます。


企業がつくり出す社会の雰囲気に、アクションを起こす


--まず、LGBTという言葉を知らない人のために、簡単に言葉の意味を教えていただけますか?

榎本悠里香さん(以下、榎本):LGBTはレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとったもので、一般的に性的少数者の総称として使われている言葉です。

性的少数者とはどういうことかというと、性的指向(誰を好きになるか)と性自認(自分の身体的な性別と自分の認識が一致しているかどうか)の2つの点で、マイノリティ(少数派)であるということです。

女性が女性を好きになるレズビアン、男性が男性を好きになるゲイなどは性的指向のマイノリティで、生まれた際に診断された身体の性別とは別の性別として生きていこうとするトランスジェンダーは性自認のマイノリティになりますね。中にはこの組み合わせで、トランスジェンダーでありゲイでもある、という人もいます。

--現在Letibeeでは企業を対象にLGBTの基礎知識や付き合い方を考える研修・ワークショップを行っていますが、当初は同性カップル向けにウェディングプランニングを行っていました。なぜいまの事業へと移行したのでしょうか?
実際にLetibeeがプロデュースしたウェディングの様子。Letibeeでは一般の企業向けに研修を行うほか、ウェディング企業に特化したLGBT研修も行っている


榎本:同性カップル向けのウェディングプランニングを行う中で、LGBTという存在の認知度が足りていないと思ったからです。ウェディング事業を立ち上げた当時、式場側から「なんとなくネガティブなイメージがある」「2人ともタキシードで式を挙げているのを他のお客さんが見たら、どう思われるか分からない」といった理由で断られることが多くありました。そうした現状を知って、まずはLGBTについて正しい知識を持ってもらう必要があると考え、いまの業態へとシフトしていったんです。

企業を対象にしたのは、個人より社会に強い影響力を持っている企業がメッセージを一緒に発信してくれることが社会を変えていく一つの方法ではないか、と考えたから。そのため、いまは企業を対象に活動しています。

--具体的にはどのような研修を行っているのでしょうか?

榎本:LGBTって何だろう?という基礎知識のセミナーと、それを経てから生まれた疑問を解決するためのワークショップです。私たちの研修は「無意識の偏見」に目を向けよう、という内容が特徴。その考え方を面白いと思ってくれる企業に対して研修を行うことが多いです。

--「無意識の偏見」とは何でしょうか?

榎本:私たちが自覚なく持っている、物事への偏った見方のことです。たとえば、神奈川県出身の人が「北海道出身っぽいね」と言われたとしても、「どのへんがそうなんだろう?」と思うだけで、比較的にフラットに受け止められますよね。でも、「レズビアンっぽいね」と言われたら、思わず否定したくなる人もいるのではないでしょうか。

「自分はLGBTに偏見は持っていない」と思っている人の中にも、そういう人はいるかもしれません。それって自分では意図していなくても、ネガティブな思い込みを心のどこかに抱いてしまっているからではないでしょうか。

それを弊社では「無意識の偏見」と呼んでいます。他にも、例えばテレビの芸人さんのネタなどでLGBTの扱われ方を見て、笑ってよい存在として刷り込まれたり、逆に「ゲイの人はおしゃれ」「LGBTには優秀な人が多い」などの想像も、ポジティブなので分かりづらいですが偏見の一種です。

偏見ってどんな人にもあるものなんです。でも、「自分には偏見がある」という前提に立たないで物事を消化していくと、あるときそれがネガティブな偏見として表れることがある。そのことに気づいていない人はけっこう多いです。自分にも偏見があるという前提で考えてみると、理解できることがあると思います。

Letibeeが行う研修の様子。LGBTの基礎知識とワークショップで、長いときは3時間近くかけて行う



LGBTは12人に1人。だけど見かけないのはどうして?


--LGBTという言葉はここ2年ほどで認知度が高まってきた印象があります。どういった背景で広まっているのでしょう?

榎本:大きな出来事として、2015年に渋谷区で「同性パートナーシップ条例(同性間のカップルを結婚に相当する関係として認める条例。日本で初めて同性カップルを公的に認める制度となった)」が成立しました。行政がこれを行ったことで、企業が「こういう取り組みもやっていかないといけないんだ」と認識したことが挙げられます。

ただそれだけではなく、最近は働き方改革や女性活躍の推進、多様性などが問われ、世の中が新しい働き方、新しい社会を模索していますよね。その時代の流れと合致したことが広がる要因になったのだと思います。

--2016年のLGBT総合研究所の調査では、日本のLGBTの割合はおよそ8パーセント、12人に1人となっています。この数字について、企業はどういった印象を持ちますか?

榎本:だいたい、「そんなにいるの!?」と驚かれますね。見かける機会は少ないので、数字とのギャップが大きいんです。なぜかというと、LGBTの方の中でそのことをカミングアウトしている人はたった4パーセント。いないのではなく「見えない」んですよね。

日本全国の20~59歳の男女に、職場にLGBTがいるかどうかを聞いたアンケート。オープンにカミングアウトをしている人、一部にカミングアウトしている人を合わせて4.3パーセントとなった
(LGBTマーケティングラボ「職場における非当事者の感覚調査 - PART 2」より転載)


--4パーセントしかカミングアウトしていないのは、カミングアウトすることで偏見や差別を受けるリスクが大きいからでしょうか。

榎本:それもあると思います。あと、20代のゲイやレズビアンの方の声として「カミングアウトしてもメリットがない」という意見はよく聞きます。たとえばゲイの人で、男ならではの職場付き合いがしっくり来なくて抵抗感がある。日常の何気ない会話の中で、異性愛者を演じるのが疲れる。カミングアウトすれば解放されるかもしれないけれど、理解が得られなければ裏目に出てしまうリスクもある。そう考えたときに、カミングアウトしないほうがいいだろうと考えるのは仕方がないことかもしれません。全員がカミングアウトをする必要はありませんが、そうしたい方のためにも、企業側が理解を口だけじゃなくて具体的に体現していく必要があると思います。

--カミングアウトしようと思ったとき、まずするべきことは何でしょうか。

榎本:カミングアウトすることのリスクや、カミングアウトを受けた側の反応などは本当にそれぞれなので、正しい方法というのはありません。なので、これは個人的な考えになりますが、会社に味方をつくることでしょうか。上司、同僚、後輩、誰でもいいので会社で一番信頼のおける人に話してみてください。

いきなり言うのが怖ければ、まず同性婚のニュースなど、それっぽい話題を振ってみて、その人がLGBTに拒否感がないか、アウティング(勝手に言いふらすこと)しないかを見極める。いきなり全員に伝える必要はないですし、数人にでも受け入れられた実感が得られると、それだけでちょっと安心したり、満足したりできると思います。

--選択肢は会社でカミングアウトするか、しないかの2択だけではないということですね。

榎本:どんな人でも、職場でみんなが知っている情報と一部の人しか知らない情報があると思うんです。性的指向もそれと同じだと思いますね。

--体と心の性別が異なるトランスジェンダー(T)の場合はどうでしょう? 信頼する人以外には隠すことができるLGBと違い、お手洗いや更衣室の問題も出てきます。

榎本:まず信頼できる人に話してみるのはLGBと同様ですが、性別を変えるのであれば扱いや呼び方、服装が変わるので、最終的には上司や人事と相談する必要があります。ただ、性別を変えるといっても適合手術を受けて戸籍も変更するのか、戸籍は変えなくていいので社会的な扱いだけ変えたいのかによって会社の対応は違ってくるでしょう。

これに関しては、まずトランスジェンダーという概念を社内にしっかり認知させていかないと、なかなか解決が難しい。企業側もいろいろと試しながらやっているのが現状だと思います。


「カミングアウト」は悩み相談と同じ


--逆に非当事者の方がカミングアウトを受けた場合、どう対応するのが良いのでしょう?

榎本:私個人としては、普通の悩み相談をされたときと同じ対応で良いと思います。LGBTであることというより、それを言えなかったことが悩みの原因だという人が多いでしょうから、相手がすごく悩んで打ち明けてくれたようであればまず「言ってくれてありがとう」から入って、あとは「隠していてつらいの?」とか。会社でその人が過ごしやすくなる方法を一緒に探してあげるのが良いと思います。

--カミングアウトした人のことをどうしても理解できないという人もいるのではないかと思います。その2人が一緒に働く場合、周囲の人が配慮すべきことはありますか?

榎本:LGBTでなくても、誰かを生理的に好きになれないことはあると思います。それに対して受け入れられない人を説得したり、まして糾弾することはできないでしょう。

ただ、その人がカミングアウトした人を嫌っていることと、その2人が職場で平等に働ける環境をつくることは両立できるものです。カミングアウトしている人、その人を嫌いな人、どちらも存在して良いと思いますが、嫌いという感情を理由に仕事を振らなかったり、職場で攻撃したりするようであれば、会社がしかるべき対応をとる必要があります。それはLGBTでなくても同じことですよね。

ただ、機会があればどうして嫌いなのかを周りの人が探ることはできるのではないでしょうか。なんとなく嫌いということもあると思いますが、昔同性に言い寄られてトラウマになっているとか、テレビなどメディアの偏見が刷り込まれているとか、何かしら理由がある場合も多いので。なぜ嫌なのかを一緒に考えて、誤解があるなら正していくことが大切だと思います。

マジョリティもマイノリティも、一緒に社会をつくっていく


--LGBTに対して理解を深めていくためには、日々どういったことを意識していればいいでしょうか?

榎本:誰かのことを好きになる時、その人がどこで生まれて、どういう生活をしているのかという背景を知れば知るほど理解が深まっていきますよね。それと同じで、ただ「LGBTとは何か」を勉強するだけではなくて、その属性で生きていくことに興味を持って、歴史を追ってみることでしょうか。たとえば、昔「ホモ」と呼ばれていたのが「ゲイ」と言い替えられたのはどうしてだろう?とか。歴史的なことに興味を持つと、より理解が深まるのではないかと思います。

--LGBTに限らず、障がい者や外国人などマイノリティの方たちがそれぞれの個性を認め合い、全員が働きやすい社会にしていくために必要なことはなんでしょうか。

榎本:社会や企業に求められるのは、マジョリティ(多数者)の人たちがマイノリティ(少数者)の話に耳を傾けられるくらい余裕のある生活を送れるようにすることじゃないかと思います。日々の生活を送るだけで疲れているのに、多様性とか障がい者への配慮、LGBTへの理解と言われても重荷に感じてしまう人は多いと思うんです。

だけどそうではなくて、多様性とは価値観にはいろんな指標があっていいことに気づくためのもの。マジョリティにもいろんな働き方、生き方があっていい。それを企業がどんどん応援していかないと、配慮するばかりで疲れてしまいます。

最近は「ダイバーシティ&インクルージョン」と言われることが増えてきました。これは従来のマジョリティがマイノリティに配慮するという構図ではなく、一緒に何かを補完して、新しい働き方や価値観を生み出していくというもの。そのための場をつくっていくことが大切であると考えています。


人それぞれの個性を受け入れよう


LGBTというなじみの薄い言葉で書かれたニュースの情報だけを追っていると、自分たちとは違う人たちのように感じてしまうかもしれません。しかし、榎本さんの発言からはそうした特別さはなく、一人ひとりに個性があるのと同様に、LGBTという個性をとらえるフラットな視点が感じられました。

榎本さんが最後に語った「ダイバーシティ&インクルージョン」。マジョリティがマイノリティに配慮するだけではなく、お互いの多様性を認めて補い合うことで、誰もが働きやすい社会をつくっていくという概念です。こうした社会をつくっていくのは、これからを担う20代の私たち。自分とは関係がないものだとは思わず、LGBTについて、多様性について、考えてみてはいかがでしょうか?

(取材・文:小沼理)

識者プロフィール
株式会社Letibee(レティビー)
「すべてのひとがセクシャリティにかかわらず、自分の幸せを追求できる社会を実現する」をミッションに掲げ、さまざまなLGBTに関連するサービスを提供するソーシャルベンチャーとして2014年4月に設立。
一般企業やブライダル関連企業に向けて実施している、LGBTの基礎知識や炎上事例などを通して社内で真のLGBTダイバーシティを推進していくことを目的としたLGBTダイバーシティ研修は、これまでに100社以上の実績を持つ。その他、LGBTに関するさまざまな情報を発信するメディアサイト「Letibee Life」の運営や、世の中のLGBTに関する独自の調査・研究、情報発信を行う研究機関「LGBTマーケティングラボ」にて、企業の商品開発やLGBTマーケットの活性化を促進することを目的とした調査を行っている。

※この記事は2017/08/18にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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