あの人の手作りごはんを食べに行こう。「食べること」をもっと楽しくする「KitchHike」が目指す食卓のカタチ

昨日は、今日は、何食べたっけ……。ここ数年、大人も子どもも孤食が増えている日本。ごはんを食べる行為は、日々生きていく上でかかせないことです。

あの人の手作りごはんを食べに行こう。「食べること」をもっと楽しくする「KitchHike」が目指す食卓のカタチ

昨日は、今日は、何食べたっけ……。ここ数年、大人も子どもも孤食が増えている日本。ごはんを食べる行為は、日々生きていく上でかかせないことです。

そこで生まれたのは、「誰かに料理を作ってあげたい料理好きな人」と、「顔の見える料理を食べてみたい人」をマッチングするという「KitchHike」。

食卓やキッチンから世界を変えていくことを目指しているこのサービスは、一体どんな経験から生まれ、そして世の中にどんな影響を与えてくれるのでしょうか? 共同代表の山本雅也(右)さん、藤崎祥見(左)さんにお話を伺ってきました。

自身の経験から産声をあげたサービス


―「KitchHike」が生まれた経緯を教えてください。

山本雅也さん(以下、山本):「KitchHike」は2013年5月にサービスをスタートしました。もともと、僕と藤崎はそれぞれ会社員をしていたころに出会って、当時「もっと世の中を良くすることがしたいね」って話をしていたんです。2人の共通の考え方として、人と人はどうしたらもっと良い形でつながれるのかということに着目していました。

ちょうどそのころに読んだ内田樹さんの『個食のしあわせ』というブログエントリーに、「人々が集まって車座になり、一つの食物を分け合う儀礼を持たない共同体は地球上に存在しない。」と書かれていて。

ごはんを一緒に食べることで人がつながり共同体が立ち上がるという考え方にとても感銘を受けました。じゃあ、ごはんを食べて人がつながる場を生み出す仕組みをつくろう!と始めることになったのです。

自身の経年があったからこのサービスに確信を持てた。そう話すのは山本さん。



藤崎祥見さん(以下、藤崎):会社員になる前の学生時代から、インターネット上で人と人とのつながり方、つまり交流やコミュニティーにはとても興味がありました。それとは別に、会社員になって一人で食事を済ませることが多くなったころから、食事の取り方について考えるようになりました。

一人で食事をすることは手軽で便利ではあるのですけど、本当にそれでいいのか?、みんなで食べた方がおいしいのに、と疑問に思っていました。

山本と出会ったことが一つのきっかけとなり、一人食事の問題はインターネットをうまく使えば解決できるのではないか、その際には交流やコミュニティーが重要なポイントになるのではないかと考えはじめ、サービス立ち上げに着手し始めました。

―山本さんはサービスをつくるにあたって、1年半かけて47カ国の食卓を回られたのですよね?

山本:自分たちが本気で世の中に打ち出す仕組みを提供するのであれば、本当にその体験に価値があるのか、身をもって体感しなければできないと思ったんですよね。なので、まずは自分でやってみようと。

国が違ってもどんな相手でも、食を通じて人がつながることの素晴らしさを身を持って体感できました。あらためて「KitchHikeは世の中に必要な仕組みだ」と確信しました。

毎日の「食べる」ということが人をつなげていく


食事やコミュニティのあり方について考えていたという藤崎さん



―「KitchHike」は海外の人同士をつなげるサービスということでしょうか?

山本:今は違います。3年前は“旅先”でのマッチングが主でしたが、今は“日常”のマッチングを中心に扱っています。いろんなユーザーとコミュニケーションする内に、国際交流や海外の料理や食文化という文脈だけにKitchHikeをとどめておくべきではないと思ったんです。今は、食を通じて人をつなげるすべてのシーンを掘り下げています。

3年前のリリース時のインパクトもあって、今の「KitchHike」がどんなサービスに進化しているのか、まだ伝わりきっていないのかなと思っています。そこは課題ですね。

もはや、旅先で人の家におじゃまするサービスでも外国人旅行者を招いて和食を振る舞うサービスでもないですし、もしくは外国人から学ぶ料理教室のように思われがちなんですけど、今の「KitchHike」はもっと日常に近いところで、ニュートラルに食に関わるすべての人が利用できるサービスになっています。

―“旅先”から“日常”へシフトされたのですね。

山本:旅先という、非日常の中で人とつながることは、それはそれで楽しくて貴重なことです。ですが、「『KitchHike』を利用したいけど海外に行くことも少ないし、使えない」っていうユーザーの声も多かったんです。限られた時間しかない旅行中に食事のタイミングを合わせることにハードルも感じていました。

そんな時、むしろ“食”という普遍的なテーマであれば、もっと日常にフォーカスすることが求められているのでは?と気づいたんです。ふだん食べている料理は誰がどういう思いで作っているのか、日常をアップデートすることこそ、社会を変えることなんじゃないかと。

―日常で使ってもらえるようにするため、どのようなことをされましたか?

藤崎:僕たちは料理を作る人を“COOK(クック)”、食べる人を“HIKER(ハイカー)”と呼んでいます。COOKが料理と日時を登録すると、“Pop-Up(開催日時の決まったメニュー)”として一覧ページ(https://ja.kitchhike.com/jp/popups)に掲載されます。

以前は、HIKERが「●●日に食べに行ってもいいかい?」と尋ねる形式でしたが、今は逆にCOOKが「●●日に料理を作るから来てね!」と招待するサービスに進化しました。そうしたことで、食べに行く人が集まりやすくなって、より世の中に求められている日常化に近づいたと思います。

 

作る人の人柄や思いも届けたい


―「KitchHike」は料理だけでなく、どんな人が作るのかプロフィールを大きく打ち出しているので安心感がありますよね。

山本:誰がどんな思いで料理を作っているのか見えないのは、妙なことだと思うんです。「KitchHike」は料理をする人の思いをサイト上で可視化することにより、料理を食べる人もおいしいだけではなくて納得感も得られます。人と人が日常をシェアしながらごはんを食べられる幸せを肌でも感じてもらえるのではないでしょうか。

―サイト内ではKitchHikeマガジンというニュースページも展開されていますね。

山本:KitchHikeマガジンは、実際の体験レポートを中心に、レシピ、コラムなどを掲載しています。KitchHikeはメディアではなくプラットフォームなので、ユーザーが作るコンテンツをいかに増やせるかがポイントですね。ライターを雇って情報を作るのではなくて、COOKやHIKERが現場の臨場感を伝えることが大切です。


僕らがつくる、これからの食卓のあり方


―お二人は食卓のあり方を、どのように捉えていますか?

藤崎:食事には普遍性・共感性・曖昧な再現性の3つの要素が備わっていると思うんです。
この場にいる全員が昨日ごはんを食べたし、これからも食べますよね。それって実は、すごいことだと思うんですよ。本を読んだとか映画を見たとかをこの場にいる全員が昨日体験していることってまず無いじゃないですか。だけど食事だけは全員がしているし、これからもし続ける。その普遍性って特別なことだと思っています。

2つ目の共感性については、僕は料理は共感指数が高いと思っていて、「この味が好きだ」ってお互いが思うと、一気に距離が近くなるんですよね。だから一緒に同じ料理を食べて、お互いがおいしいと共感できる人とは、パーソナルな面においても気が合う。

曖昧な再現性は、食事ってレシピがあるけど、全く同じ味には再現できませんよね。1回1回違う味になるけど、それがすごく面白い。食事って、この3つの要素が合わさっているから、人と人が近くなれるんじゃないかと思います。だから僕たちは食を通じて、人が仲良くなれる現場をつくり続けて良かったなと思います。


山本:昔からどの民族でも、まったく知らない敵や異邦者が自分たちのテリトリーに入ってきたときは、基本的に自分たちのコミュニティーに受け入れるため、食事を振る舞ったという話があります。料理という、本来、分割不可能なものを分割して共有することで人と人がつながる。お酒などの液体や、タバコなどの気体も含まれますね。まさに、同じ釜の飯を食う、盃を交わす、といった世界観です。

「KitchHike」は新しいことをやっているわけではなくて、昔やっていたことをインターネットの力で再構築しているという表現が近いと思います。現在、食を共有する文化が失われつつあるので、もっと食を共有して人と人がつながれるような役割を果たしたいと思っています。

―実際にご自身で「KitchHike」を利用して、気づいたことはありますか?

藤崎:ハイカー同士が仲良くなりますね。今、弊社で働いている社員やインターンの方のほとんどが、ユーザーでもあった人たちなんですよ。

山本:それだけ濃いコミュニティーであり、濃いユーザーであり、濃いマッチングだと思います。ネット上だけで完結しないものなので、濃度は非常に高いですね。

―今後の展望についてはどのように考えていますか?


山本:ユーザーがレビューだけでなく写真をどんどん投稿して、共有できる仕掛けをつくりました。COOKの写真ギャラリー機能です。「KitchHike」では、Pop-Upが開催された日時がすごく重要なんですね。その日のPop-Upに紐づく料理、参加者、レビュー、写真の情報がCOOKの資産として貯まっていくので、あの日はこういう会だったと分かりやすくなる。

なんとなく料理の写真を投稿するだけじゃなくて、COOKもHIKERも濃い思い出として振り返って見たくなるようなギャラリーになっていけばいいなと思っています。KitchHikeは、マッチングだけではなくて、おいしい思い出を共有するサイト、それからCOOKのポートフォリオサイトとしても、利用されるようにしたいですね。


まとめ


一人で食べるよりも、誰かと食卓を囲みながら食べるごはんはなんともおいしく、楽しいもの。食べる時間がもっとワクワクできるように、そして日常の中で楽しみがもっと増やせるように。さあ、今夜は誰と何食べよう?

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識者プロフィール


山本雅也(やまもと・まさや)
「KitchHike」共同代表。広告会社に勤めた後、2013年にKitchHikeをリリース。サイトを立ち上げる際、1年半かけて47カ国の食卓を訪ねた経験を持つ。過去には「食と交流」の素晴らしさを伝えるため、「世界の食卓から」という連載をしていた。

藤崎祥見(ふじさき・しょうけん)
「KitchHike」共同代表。お寺生まれ。学生時代、世界中の人々が無償で1つのものを創り上げていくオープンソースコミュニティーに仏教の世界観との共通点を見いだし、エンジニアとして活動をはじめる。KitchHikeのプロダクト開発責任者(CTO)。

※この記事は2017/01/16にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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