発言時間、たった20秒。「5分会議」がもたらした老舗メーカーの働き方改革

もし、あなたが今日出席する会議で「発言時間は1人20秒です」と言われたら…?

スタディ 雑学
発言時間、たった20秒。「5分会議」がもたらした老舗メーカーの働き方改革
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もし、あなたが今日出席する会議で「発言時間は1人20秒です」と言われたら…?

「話が長くなってしまう」「結論がまとまらない」「意見は出ずに沈黙だけ続く」「なんとなく参加している」など、20代のビジネスパーソンのあなたなら、会議で一度はこんな経験があるかもしれません。

食品包装資材の企画・製造・販売を手がける株式会社吉村は、前述の「発言時間は1人20秒」をルールとした“5分会議”を取り入れたことによって、社員の参画意識が高まり、働き方が大きく変わった企業です。2016年には中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」人材部門に、2017年には経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれました。

今回の取材では、同社の橋本久美子社長に“5分会議”で具体的にどのような改革を進めたのか、どのように効率が上がったのかを伺いました。

トップダウン型経営からの脱却


もともとは1932年に祝儀用品の加工販売業として創業され、1954年日本茶の包装をメインに資材メーカーとして成長してきた吉村。しかし、1990年代からはペットボトル飲料の台頭で家庭用茶葉の消費量が減り、メインとしていた日本茶全体を取り巻く市場に大きな変化が起こります。そんな激変する環境下で2005年、吉村の3代目社長に就任した橋本久美子さんは現状の茶業界の復興を掲げ、デザイン性の高いパッケージ企画やさらなる付加価値がある商品企画、さらには小売店のマーケティング支援にまで業務の幅を広げ、新たなビジネスモデルを構築していきました。

ビジネスの転換を進めていくためには、代表の橋本さんだけではなく全社員の力が必要。変革期の中で、彼らの意識や行動も変化させていかねばなりません。そこでまず目に付いたのが先代社長の「トップが全てを決める」というトップダウン型経営でした。橋本さんは“生活者目線”で付加価値の高い商品を生み出していくために、結婚・出産で離職していた女性社員のリアルな声や知恵を活かすことを目指します。さらに部署や属性など関係なく、すべての社員が新たなビジネスモデルに貢献できるよう、人材の活性化を図るなど試行錯誤しながら少しずつ改革を進めていきました。

そして、「社員みんなの意見を聞く」経営へシフトチャンジするため、全員参画型の会議を立ち上げたのです。

「現場の意見を吸い上げたくて部署横断的に会議を複数立ち上げましたが、リーダーによって会議の進め方はそれぞれ、全く違うものでした。

意気込み表明に終わる会議、いつまでたっても議論しては先送りする会議、議長がなんでも決めてしまう会議…。そこで会議を行うにあたって、何か一つ、指針が欲しいと考えたんです」

外部のさまざまな研修を受けては試行錯誤を繰り返していた中、偶然知り合ったのが、当時から5分会議を提唱していた株式会社CHEERFUL代表取締役の沖本るり子さん。さっそく橋本さんは5分会議のノウハウを取り入れることにしました。


革命を起こした「5分会議」とは?


5分会議の基本はまず、毎回「司会者」「書記」「タイムキーパー」を決め、参加者を5~6人以下に設定。次に、5分を1区切りとして1人20秒以内の発言を順番にしていきます。会議ごとに誰もが書記や司会者を経験するため、書記がまとめやすいように20秒以内で伝えたいことを短く簡潔に話す力が身につく、というわけです。

吉村の会議改革前の大きな課題は、「会議が長い」「決めたことが実行されない」「会議が対立を生み社内の空気を悪くする」の3点でした。まずは吉村の会議に沖本さんが入り、会議術のレクチャーをしたあとに社員たちはそのスキルを使って実際の会議を行う、という流れでスタートしました。しかし…。

「常にキッチンタイマーで時間を区切られて発言するなど、それまで経験のない会議の進め方でしたので、最初は全員が戸惑っていました。時間を意識し過ぎてしまうため、マイペースに自論を展開することができず、ストレスを感じる幹部社員が続出。

『研修なのか、会議なのか。どっちかにしてほしい』という要望が出るなど、紛糾(ふんきゅう)しましたね」

さらに、工場の現場にいた110人の社員の中からも続々と不満の声が。

「現場のオペレーターには『人と話すのが苦手』という人が多い。会議術は全員必須のスキルなので、それが嫌で会社を辞めた社員もいます。

『会議があると生産が下がる』『会議は参加したくない。決めたことには従うし、意見はないのでそっとしておいてほしい』など現場からの意見も出ました」

価値観の対立は、成長するチャンス



そんな逆境の中でも、橋本さんは諦めませんでした。

「研修だとスムーズにできるのに、実際の会議では20秒のルールが守れないなんて、何のために導入しようとしているのか分からないと思ったんです。だからこそ、5分会議の徹底を貫きました。

今では、会議こそが社員の教育の場だと考えています。

限られた時間をうまく利用する時間管理、短い時間で相手に伝えるプレゼン能力、相手の発言の要点を覚えて書き留める力、ストーリーを組み立てるためのアジェンダ作り、最終的にこの会議で何を決定するのかまとめる力、さらには聴く、質問するなど、積極的に会議に参加するということ…。

このように5分会議では、多角的なスキルが磨けます。話すのが苦手だった現場の方は、この会議で着実にスキルを身につけ、今ではみんなの意見をうまく吸い上げてまとめられるようになりましたよ」

5分会議の最大の特徴は、20秒ごとに意見を何周も矢継ぎ早に回していくこと。そうすることで「誰が何を言ったか」が分からなくなっていくのだとか。従来の会議では、発言の内容よりも社内権力などのしがらみによって、「何を言ったか」より「誰が言ったか」が重視されることがありました。ところが、同会議の特性によって誰もが本音で自由に自分の思っていることを発言できるようになったため、社内間の派閥がなくなり会社の風通しも良くなったといいます。

「会社は社員が社外でつらいことがあっても、社内では本音が言えるような『ホーム』でありたいと思っています。意見の違いや価値観の対立は、改善や成長へつながるチャンスだと捉えたいんです」

この「どんなことでも、みんなで決める」という会議革命をきっかけに、社員の協調性が向上し、成果も目に見えて上がってきました。例えば、同社では営業部と物流部の連携がうまくいっておらず効率が悪いという課題がありましたが、同会議により問題点が明確化。改善点を模索していき、結果的に年間1,600万円の売り上げ増加に成功しました。

そのほか、配偶者の転勤・介護などの理由で退職した社員が復職できる「MO制度」(戻っておいでの略)や、つわり中に診断書不要で期間を予告して休める「法定以上のつわり制度」などをこの5分会議により決定・実施し、現在では出産後の退職者は0人に!

これら社員の多様なニーズに応じる中で長時間労働削減の取り組みも実施し、2011年度に一人当たり約42時間だった平均残業時間が2015年度には半分以下の17時間に、離職率は2013年の10.05%から1.9%にまで大幅に減少しました。


まずは現状の会議から学ぶべし!


最後に、私たち20代のビジネスパーソンの立場からでも始められる「会議改革」について橋本久美子さんからアドバイスをいただきました。

「あなたの会社の会議は、どんな会議でしょうか? たとえ自分が考えているような理想的な会議でなくても、会議から学べることはたくさんありますし、自分の提案で状況を変えていくこともできるかもしれません。

発言は1分以内と決めて、参加者全員に伝わるように結論から話す。

たくさんアイデアが欲しいときには相手が自由に意見を言えるようなオープンクエスチョンに、まとめたいときにはイエスかノーで答えられるようにクローズドクエスチョンにするなど、質問の仕方を工夫してみる。

意見を可視化するために、会議中はなるべくホワイトボードを利用し、最後にそれを写真に撮って議事録として参加者で共有する。

この会議のそもそもの目的は何かをアジェンダで確認しておき、会議が始まったらアジェンダを引き合いにだして、脱線しないようにする。

話が長くて結局何を言いたいのか分からない人の発言は、反面教師とする。


まずはこのようなことから始めてみてはいかがでしょうか。少しずつ、何かが変わるかもしれません」

会議にはさまざまな人が複数人参加し、それぞれが自分の経験や知識をもとに意見を持っています。そこには学ぶことも気づくことも多くあるはず。会議に率先して参加することが自分の成長やスキルアップにつながっていくことでしょう。

20代のビジネスパーソンのあなたも、橋本さんから教わった「会議改革」を自分なりにでも少しずつ始めてみませんか。今後、大きな変化や成果が得られることになるかもしれませんよ。

識者プロフィール
橋本久美子(はしもと・くみこ)
株式会社吉村代表取締役社長。
食品包装資材の企画・製造・販売を手がける同社に1982年入社。2005年、代表取締役社長に就任。「発言時間は1人20秒」をルールとした“5分会議”を取り入れたことにより、社員の参画意識が高まり、働き方が大きく変わる。2016年に中小企業庁「はばたく中小企業300社」受賞。2017年には経済産業省「新・ダイバーシティ企業100選」受賞。

※この記事は2017/10/16にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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