「おいしい」から始まる福祉って? うまふくがかなえる、気軽な社会貢献のかたち

寄付をしたことはありますか?

スタディ 雑学
「おいしい」から始まる福祉って? うまふくがかなえる、気軽な社会貢献のかたち
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寄付をしたことはありますか?

小学校や中学校での「赤い羽根共同募金」やコンビニ募金などはありますが、ほかに身近に寄付をする機会ってあまりないですよね。街頭募金やネットでの寄付にいたっては、「そもそも、そんな寄付の方法を知らない」という方も少なくないのではないでしょうか。

社会の困っている方のためにはなるとはいえ、自分自身への見返りなくお金を支払うことには、多少のハードルを感じても仕方がないもの。だけど、もし「寄付をしたら、返礼品としておいしいものがもらえる」のだとしたらいかがでしょう? 普通の寄付よりも、なんだか少し「やってみてもいいかも…」と思う方もいるのでは。

そんな「おいしい寄付」を本当にすることができるのが、特定の障がい者福祉施設に寄付をすればその施設で作られた「うまいもの」がお礼として贈られてくる「うまふく」です。2017年8月、福祉施設の課題解決に取り組む一般社団法人プレニッポンが開始。以来テレビやネットメディアを中心に話題を集めています。

今回は、うまふくを通じて、「もっと気軽に寄付を始める入り口をつくりたい」と語る代表理事の松山康久さんに「うまふくを始めた経緯」「プレニッポンの活動」について聞きました。


福祉に関心がなくても、「食べたい」で寄付できる


うまふくは「食べたい」から始まる障がい者福祉施設への寄付サービス。うまふくのサイトから食べたい商品や応援したい施設を探して寄付すると、「返礼品」として施設で作られたおいしい食品が送られてくるサービスです。

サービスを通じて施設に寄付したお金は「寄付金控除」の対象になることも(※)。この仕組みは、ふるさと納税をヒントにしているそうです。

※寄付金控除の対象施設や適用範囲について、詳しくはうまふくWEBサイト「寄付金控除について」をご確認ください。

そんなユニークな仕組みを使って「おいしいものを届ける」サービスをつくったのは、松山さんが福祉業界で実感した「おいしい体験」がきっかけだったと話します。

「これまでプレニッポンでは、福祉施設の課題を社会に伝え解決へ導いてゆくために、さまざまな取り組みを行ってきました。それらの取り組みを通じて、福祉業界との接点が増えるうちに、福祉施設の中には素晴らしいものや食べ物を作っている施設の存在がある、ということに気づきました。もともと食べることが好きということもあり、それらを体験しているうちに『こんなに素晴らしいものは、もっと世の中に広めたい』と考えるようになりました。

一例を紹介すると、埼玉県川口市にある『晴れ晴れ』という施設。川口市の名物『ベーゴマ』を製造する鋳造所で作られた型で焼き上げた『ベーゴマクッキー』や、米粉で作った『茶葉丸』というクッキーを販売しています。食べてみると、これが驚くほどおいしい!

それもそのはずで、晴れ晴れで作られているクッキーは、施設で働く職員さんがものすごい情熱を持って開発されたものなのです。クッキー開発のためにコンテストに出て、有名なパティシエに指導を受け、そこで生まれたレシピを施設でも作れるような工程に改善をして、商品化を行っている。おいしいから多くの人が買いに来るし、作業工程も複雑でなく、障がいがあっても多くの方が働ける。そういう雇用創出のいい循環を生み出しています。

そんな『おいしい福祉』の魅力を広める方法はないだろうか。考えていたときに思いついたのが、ふるさと納税の仕組みでした。世間的に関心が高くて、しかも気軽に寄付できるふるさと納税のような仕組みをつくれば、気軽に寄付もできるし、おいしい魅力を届けられる。そう思いました」

「晴れ晴れ」のベーゴマクッキー。鋳物の町・川口らしく、鋳物の焼き型で焼き上げたベーゴマ原寸大の仕上がり


おいしい福祉を届けるうまふくは、11月末時点で4施設、11商品が掲載されています。掲載する施設や商品はプレニッポンメンバーで協議を重ねて、慎重に選んでいるのだとか。

「返礼品にはこだわりたいと思っています。食べ物以外でもすてきなモノを作っている施設もたくさんありますが、まずは『おいしい』という切り口に絞って、魅力的な価値を届けていきたい。今後は掲載する施設や商品を増やしていきたいと考えていますが、その軸はぶれずに続けていきたいですね」


始まりは東日本大震災。「地方の施設に雇用を生みたい」


そもそもうまふくを始めたのは、プレニッポンがそれまでにも多くの障がい者施設とのつながりがあり、彼らの活躍や作るモノの質の高さを知っていたことが大きな理由だそう。その施設とのつながりの元をたどれば、プレニッポンが立ち上がった2011年に開始した「ゲラメモ」という商品の開発がはじめなんだとか。

書籍の校正紙(ゲラ)が再生利用されている。もしかすると、あなたの好きな作家さんのゲラが入っているかも?


ゲラメモは、2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で仕事を失ってしまった、東北にある障がい者施設の人たちのために仕事をつくりたい、そう考えた共同代表で編集者の平原礼奈さんと、当時共同代表を務めていた編集者の羽塚順子さん、デザイナーの國松繁樹さん3人のもとで開始したプロジェクトだったと言います。

「団体が発足した当初は『ゲラメモ』という商品の開発や販売を行っていました。『ゲラ』というのは、編集の現場で大量に廃棄される『校正紙』のこと。本や雑誌が完成するまでの確認や修正を行うために使用されるテスト原稿が大量に廃棄されるので、それを自由帳にして再利用しようというプロジェクトでした。『無駄な紙の再利用』『地域の再生』を実現する取り組みとしてスタートしました。

発足のきっかけは、大震災のあとの悲惨な状況に手を打ちかねた、東北の施設の方から羽塚に相談がきたこと。その話を受けて、編集者として働く羽塚が日頃感じていた『無駄なゲラの再利用』を実現する『ゲラメモ』を製作して販売するという企画を提案したのです。企画に共感した平原とデザイナーの國松も、羽塚と一緒に東北を訪問することになりました。

現地の施設に到着すると、そこには疲れた顔の職員さんと、雑巾を作る利用者さんたちの姿があったそうです。『何の仕事ですか?』と聞くと『仕事ではないけど、訓練のために作っている』という返事が返ってきた。仕事をしたいのに仕事がない状況を目の当たりにして、継続的に需要のあるものを生み出して、常に仕事が回り続ける状況を作らないといけない。3人とも、そう強く感じたと聞いています。

本格的にゲラメモの商品開発が始まり、まずはプレニッポンのメンバー3人が日本の伝統技術『和製本四つ目綴じ』を職人の方に習いにいきました。その技術を施設の職員さんに伝え、利用者の方にも作業を教えていきます。そこでつまずく工程はさらに改善を加えて、スムーズに作業ができるように整えていきました。

スタートはやや苦戦しました。販売会を開いたのに全然売れない。少し落ち込みましたが、企画に共感してくれたメディアや雑誌に取り上げられたことで徐々に反響が生まれてきました。その後は、ゲラを提供してくれる作家さんや編集者さんの協力にも恵まれ、チャリティーイベントの開催、企業タイアップ、関連企画のグッドデザイン賞受賞など、多くの方にゲラメモの意義を伝えることができ、ある程度の手応えをつかむまでに至りました」

ゲラメモを開発して販売を行った結果として、「雇用の創出」だけではなく「地方の福祉施設が抱える課題の認知拡大」という効果も生み出すことができたそうです。ここでのつながりや気づきが、のちのうまふくの企画にもつながっていくのです。


福祉施設との関わりで見えてきた魅力


ゲラメモを通じて多くの方からの共感、応援を実感したという松山さん。その取り組みを通じて広がった障がい者施設との関係は、それまで実は福祉に関心を持っていなかったという松山さんにもあることを気づかせてくれたそう。

「施設の方と触れ合う中で、いろいろなことに気づきました。例えば、企業や外部との連携に長けている福祉施設があるということ。企業から依頼される仕事も多いですし、施設間で協力して仕事を分け合う機会も多い。地域の農家と協働している施設もあります。私たちが外部の団体として関わるときにも、スムーズに連携を行うことができました。

施設の利用者の方たちの仕事ぶりにも驚く一面がありました。作業をするときに苦労する部分はあるのですが、的確な指示を出すとスムーズに実行できて、中には職人といえるほどのスキルを持つ方もいらっしゃいます。

例えば「だいたいこれくらいで縫ってください」と曖昧な指示を出すのではなく「3センチ幅に10針刺さるように縫ってください」と伝える。そうすると驚くほど精密にその作業をこなせる力を彼らは持っているんですね。ゲラメモを製作する現場には私たちも立ち会いましたが、作業工程を細かく分解して、正確に伝えることで、スムーズに作業できるようになっていきます」

ある施設での「ゲラメモ」制作中の様子


うまふくには「商品の紹介」とともに「施設の紹介」や「施設の物語」が掲載されています。それは、各施設に存在する「物語」「努力」の工程を伝えたいという平原さん、松山さんの思いが込められた結果なんだとか。作業工程の改善や指示の最適化には、現場の職員さんや利用者さんの苦労と努力の軌跡が詰まっているようです。

ご紹介した「ベーゴマクッキー」を手作りする施設「晴れ晴れ」のページでは、施設の歴史や手作りお菓子に込められた思いなどの物語が読める



うまい福祉は、福祉に関心がなくても始められる社会貢献。


松山さんいわく、うまふくのサイト利用者には、30代以上の方が多いのだとか。一方で「20代の人たちでもできることは?」と尋ねるとこのようなことを話してくれました。

「無理に『自分も寄付しなくちゃ』と思う必要はなくて、例えば自分の興味関心がある分野の中で、社会貢献ができる仕組みはないか探してみるのはどうでしょうか?

うまふくは『おいしそう』という関心から始まる寄付を支援する活動なので、もちろん最終的には何らかの寄付をしてもらいたいという気持ちはあります。ですが、そうでなくてもうまふくを見てくれた方が『おいしそう』『食べてみたい』という気持ちが生まれるだけでも、いい変化なのかなと思います。うまふく以外にもいろいろな仕組みの福祉との関わり方はあるのかもしれません。自分が無理しない範囲でまずは社会に目を向けてみてもらえたらうれしいですね」

ふるさと納税の仕組みを活用して「おいしい」から寄付ができるうまふく。福祉との関わり方が分からない人でも気軽に寄付をすることで、自然と社会と関係づくりができるという魅力がありました。

一度、うまふくのサイトへ訪れて施設で活躍する方々のすてきな物語を楽しみながら、自分が好きな食べ物、おいしそうな食べ物を探してみませんか? 「おいしそう」「食べたい」と思ったときにはもう、社会との関係が始まっています。その商品を味わうつもりで、「うまい福祉」を始めてみてはいかがでしょう。

(取材・文:大沢俊介/編集:東京通信社)

識者プロフィール
一般社団法人プレニッポン 共同代表 松山 康久(まつやま・やすひさ)
Webマーケティング・制作会社に勤務後、2005年にフリーランスとして独立。以降、製造業・医療関連施設・コンサルティング会社・不動産・社会福祉施設など、さまざまな業種でのWebサイトの企画や制作を手掛ける。2012年よりプレニッポンに参加。うまふくの企画、制作、運営に携わる。
うまふく:ttps://umafuku.jp/

※この記事は2017/12/27にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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