そこで今回は、NPO法人の設立を支援するNPO法人「NPO法人ファストウェイ」に、具体的なNPOの組織や仕組み、給与形態について詳しく伺いました。
NPOは市民が集まって社会貢献を行う組織
―NPOとはどういった組織でしょうか?
「NPOとは『Non Profit Organization』の略語で、日本語に直すと『非営利組織』という意味です。これは、営利を目的としない組織・団体のことを指しています。
広い意味では市役所や労働組合なども含まれますが、一般的には『営利を目的とせず社会貢献活動を行う市民の活動』をNPOと呼んでいます。
簡単にいえば、人が集まって社会のためになる活動をする団体のことです。
NPOは『NPO法人』と『任意団体のNPO』に分けられます。NPO法人は特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき都道府県または指定都市の認証を受けて設立された法人のこと。
一方、法人格をもたず任意団体としてNPOの活動を行うこともできます。まず任意団体として活動をスタートし、事業が安定してメンバーが集まった段階で法人になる団体も少なくありません」
―「非営利」とは具体的にどういうことでしょうか?
「NPOの活動が広がっている現在でも、『NPOの事業ではお金を受け取ることができない』と思い込んでいる人が多くいます。『非営利』という言葉に無料の慈善事業のようなイメージを持たれているからでしょう。
しかし、非営利と無報酬はイコールで結ばれるわけではありません。ここでいう非営利とは、『利益の分配をしない』という意味です。
一般的な会社との違いを比較してみましょう。会社は多くの人(出資者)からお金を集めてそれを元手に事業を行い、もうかった分を株主などの出資者で分配するシステムになっています。
NPOも会社のように人が集まって事業を行い収入を得ることができますが、利益は構成員に分配することができません。そういった意味での『非営利』が活動の前提になっています」
NPO法人はNPOに従って運営している
―では、NPOは実質的にどのように運営されているのでしょうか?
「NPOの運営というと、なにか特別な手順が必要だと思われるかもしれませんね。また、NPO法人と任意団体のNPOとではかなり違ってきます。
任意団体の場合は制約が少ないため、基本的に自由に活動できます。
これに対してNPO法人の場合は先ほど述べたように利益の分配ができないというだけでなく、NPO法に従った運営が必要となります。
メンバーとして最低10人の社員(議決権のある会員のことで、株式会社でいえば株主にあたる人々)を集め、総会で最低4人の役員(理事3人と監事1人以上)を選ばなければなりません。理事と監事は、会社でいう取締役と監査役にあたります。
NPO法人の運営は、役員を親族ばかりにできない、毎年事業報告書などの書類を提出しなければならない、公職の候補者や政党を推薦できない……など、NPO法で定められた制約や義務があります。
しかし、これらのルールを守って事業を行うという点以外は、基本的に会社の運営と大きく異なることはありません。NPO法人の場合、資金不足のときに本来の公益活動のほかに『その他の事業』として収益のある事業も行うことができます」
―では、運営資金や給与形態などについて教えてください。
「先ほどお話ししたように、NPOであっても事業収入を得ることは可能ですし、活動の結果として利益が出たとしても問題はありません。
主な収入源としては事業収入のほか、会員収入、補助金などがあります。もちろん、会員や役員に利益を分配することはできませんから、収支でプラスが出れば次の期に繰り越すか、またはそのお金を使ってさらに社会貢献をすることになります。
給与形態についても、基本的にNPOだけに共通する特有の制限などはなく、源泉徴収や社会保険などについては会社と同じです。ただ、役員報酬に関しては、報酬を受けることができるのは役員総数の3分の1以下という制約があります」
NPO法人の活動は多岐にわたる
―ボランティアとNPOの違いについて教えてください。
「両者の違いは『個人か団体か』という点です。同じ目的・事業のもとに個々のボランティアが集まってNPOになるケースもよくあります。
ここで『ボランティアは無償だから、利益を出すNPOとボランティアは同じではない』という意見が挙がるかもしれませんが、それはボランティアを『報酬を受け取らず自分の意思で公益活動などに参加すること』と捉えている人が多いからだと思われます。
そもそも、ボランティアの語源は『自発的に活動する人』ということで、志願兵という意味もあります。自発的という点が大事なので、有償無償が問われるものではありません。
このように、ボランティアに対する報酬の是非に関しては議論もあるところですが、両者の違いは有償無償の違いではなく、個人か組織か、という点でしょう」
―では、社会的企業とNPOの違いは何でしょうか?
「社会的企業は社会問題の解決を目的として収益事業に取り組む事業体のことで、ソーシャル・ビジネスも含まれます。
社会的な課題の解決を目的とする点では、社会的企業はNPOの活動と重なるところも少なくありません。両者は有償、無償どちらのサービスも可能です。
大きな違いといえば、資金力とスピーディーな事業展開でしょうか。社会的企業が提供する専門分野での商品・サービスの品質レベルは高いものがあります。
また、社会的企業は人材の調達も活発ですね。主な資金源が収益事業であるため、より柔軟で迅速な事業展開が行えるようです。
一方、多くのNPOは資金力という点で企業には劣るため、補助金や助成金に大きく依存し、その結果、活動の自由が制限されることもよくあります。
ただ、企業と一般市民の利益が対立するような消費者保護などの分野では、市民の立場に立ったNPOの独自性を生かした事業を行っています。そのため社会的企業では関わりにくい事業にも、果敢に取り組み活動できるのがNPOの強みだといえます」
―NPOにはどのような活動があるのでしょうか?
「NPO法人は下記に挙げるような、非常にさまざまな分野で活動をしています。
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
上記のような活動にあてはまり、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する活動を『特定非営利活動』と呼んでいます。団体や個人の利益を目的とする活動はここには含まれません。
現在5万ほどあるNPO法人の中では『保健、医療又は福祉の増進を図る活動』を行う団体が最も多いようです。『観光の振興を図る活動』などNPO法の改正で追加された分野もあり、NPOの役割は今後もさらに大きくなるものと思われます」
今後もっと活躍が期待されるNPO。
一般企業と違い、組織の利益ではなく市民や社会への貢献が主な目的となるNPO法人。社会的な課題が増えている今、NPO法人が私たちの生活に与える恩恵は非常に大きいものといえるかもしれません。
その活動の結果を客観視するだけではなく、自分が仕事でどのように社会と接点を持てるか、この機会に考えてみるといいかもしれませんね。

識者プロフィール
ゼント日高(NPOファストウェイ代表理事) NPO法人の設立をめざす人が、費用をかけずにスムーズに手続きができるよう、分かりやすい解説講座などを提供。千葉県や東京都内でセミナー講師も務めている。
※この記事は2016/09/08にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。