仕事に求めるのは刺激?安定? 東京を離れた会社員に聞く「地方で働くということ」

都心部と地方を比べると、人口の多さや生活環境、交通手段など違いはさまざまありますが、ビジネスパーソンにとって「魅力的な仕事の有無」は、働く場所を選ぶ際に大きな判断軸になるのではないでしょうか。

はたらく ライフハック
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都心部と地方を比べると、人口の多さや生活環境、交通手段など違いはさまざまありますが、ビジネスパーソンにとって「魅力的な仕事の有無」は、働く場所を選ぶ際に大きな判断軸になるのではないでしょうか。

地方にはない魅力的な仕事を求めて都心へ移住してしまう若者が多く、それによって地方は現在、人材不足、人口減少に悩まされているのだとか。

そんな地方が抱える「仕事」の課題を解決するべく、地域が主体となって改善を推し進める活動も活発に行われています。その中で「IT産業の活性化」を目指し企業誘致や移住者増加施策を積極的に行い、目覚ましい成果をあげているのが島根県の松江市。

島根県松江市は「Rubyの聖地」として知られており、ソフトウェア開発会社や開発者たちの優遇を行っています。今回はその施策を利用する株式会社モンスター・ラボの島根開発拠点でエンジニアとして働く羽角均さん(メイン画像、左から2番目)に、東京と地方の働き方の違いや環境の変化など、また、松江市で働くことの実態について伺いました。

都心部への人口集中が加速する一方で、近年では「地方ならではの魅力」に関心を寄せる方が徐々に増えてきています。地方の暮らしや働き方が気になるという20代の方はぜひご一読ください。


Rubyだけではない! 松江の魅力が移住の決め手


モンスター・ラボの島根開発拠点


―最初に、島根県松江市に移住したきっかけを教えていただけますか?

モンスター・ラボが島根開発拠点を立ち上げる話を聞いたことです。2013年11月からモンスター・ラボにフリーランスのエンジニアとして関わっていたのですが、一緒に案件を担当していた社員の人から、「Rubyの街」として町おこしを行っている島根県松江市にオフィスをつくるという話を聞きました。それが2014年3月ごろですね。

最初はその社員が1人で立ち上げを行っていたのですが、その話を聞いた時に僕も興味を持ちました。そこで移住したい意向を伝えたところ、トントン拍子で島根開発拠点に行けることに。2017年7月に島根開発拠点ができると同時に移住して、正社員にもなりました。

―それまでは東京で働いていたのですよね? 移住に踏み切った理由は何だったのでしょうか?

僕自身は千葉県出身で、ずっと東京で働いていました。ただ、エンジニアという仕事の特性を考えると、東京以外の場所でも、案件さえあれば東京と遜色のない仕事を行うことはできるだろうと思っていました。

というのも、モンスター・ラボはもともと開発拠点の多い会社なんです。当時から中国に拠点を構えていたこともあって、遠隔で業務を進めるケースが数多くありました。社員とも取引先ともチャットやテレビ会議を活用して仕事をするのは当たり前だったので、松江市に来たからといってこの環境が大きく変わることはないだろうと考えていたのです。松江市への進出と相前後してベトナムやバングラデシュなどにも拠点がつくられ、この傾向はより強くなってきています。

それに、実は松江市には学生時代に旅行したことがあって、この土地の魅力を存分に知っていました。城下町だったので文化レベルが高く、暮らしに必要なものがコンパクトにまとまった便利な街です。

東京から物理的にかなりの距離がある一方で、暮らしの魅力が溢れる地域。しかも「Rubyの街」として町おこしをしているため、Ruby開発者たちも一定数いるので、Rubyの話をする環境は整っています。開発者としてのキャリアと、暮らしの質とを考えると、移住することに対するハードルはそれほど高くはなかったんです。

―移住前からすでに「リモートワーク」には慣れていたのですね。とはいえ、これまでの環境を離れることに不安はありませんでしたか?

正直なかったですね。妻にも相談してみたら意外といい反応で、すぐに「行きたい」と言ってくれました。この先も松江を離れるつもりはありませんよ。

ただ、移住を検討している人たちの中には、東京と比較してしまってなかなか決意を固められない人たちもいるようです。移住を検討している人には「Uターン」「Iターン」の2種類の人がいます。「Uターン」は自分の出身地を離れて他地域に出ていた人たちが出戻りをする移住。「Iターン」は自分の出身地とは違うエリアへ移住することです。Uターンは地元へ戻る行為なので、「失敗はできない」と考えて、重い決断をする人が多いのですが、Iターンは比較的気軽に考えて、比較的気軽に移住をすることができます。僕はIターンに当たる移住でしたが、松江市の方たちがそれぞれの違いを理解した上で案内をしてくれたので、移住の参考になる情報を多くいただくことができました。

それを踏まえて「Iターン」の視点で話すと、やっぱり東京の方が魅力的な仕事は多いですね。エンジニアとして最先端を走りたいなら東京のほうがキャリアを歩みやすいように思います。一方で、仕事と生活のバランスをとりたい方や、松江市や地方の魅力を感じられる方なら迷わず移住を決意できる。僕は松江市に魅力を感じていたので即決でした。


街に「何か」を求めずに、街に「何か」をする意識



―島根開発拠点に移ってからは、どのような仕事をされているのでしょうか。

Ruby on Railsを用いてWebアプリケーションの開発を行うWebエンジニアとして働いています。ただ最近は、ハードウェアやIoT(Internet of Things)※の開発なども行っています。

※IoT:「モノ(物)」がインターネットに接続され(単につながるだけではなく、モノがインターネットのようにつながる)、情報交換することにより相互に制御する仕組み

島根開発拠点に来た当初は、東京に所属する営業がこちらに持ってくる案件だけを担当していました。ですが、移住に慣れてからは島根らしい仕事もできるだろうと、松江市にある酒造会社と共同プロジェクトとして温度管理のIoTデバイスを開発したり、自分のツテで東京の仕事を持ってきたりと、営業から仕事をもらうだけではなく、エンジニアという枠を超えた働き方にも挑戦しています。

―島根開発拠点に来たことを活かして、仕事の幅も広げているのですね。

地方に来れば仕事と生活が必ず充実するというわけではありませんが、「自分で何かを起こせる」人は地方でも強いと思います。「地方に行けば何かが生まれる」なんて都合のいいこともないのですが、「何かを実現させたい」という思いを持って積極的に行動すれば、アクションを起こしていること自体が人の目に留まり、その界隈や別業界のトップとつながることができる。

僕は移住イベントへの登壇や、ITを活用した日本酒の飲み歩きイベントを企画するなかで、多くの酒蔵の方々と知り合いになることができて、先のIoT案件の事例に結びつきました。

自分の意思を持って活動して、対外的な活動を広げていく人。コミュニティや勉強会、イベントに期待するのではなく、自ら周囲を巻き込むことを楽しめる人にはこの環境はとてもおすすめです。もちろん、派手なことをせずにのんびりと暮らしたい人にも魅力的な環境だと思いますけどね。

―あくまでも生活と仕事の両立を求める意識が大切で、刺激を求めての移住は必ずしも達成できるわけではないということですね。

一流を目指して単純に情報量を多くしたい人にとっては、人口20万人の地方都市よりも東京にいたほうが、100倍以上刺激があると思いますよ。もちろん、引っ越して半年くらいは松江の人たちに支えてもらったり、人との出会いの機会に恵まれたりと、何かを与えてもらうことが多い。ですが、ある程度慣れてからは、地域に何かを返していくほうが、楽しめるんじゃないでしょうか。

あくまでも「地方への移住」ではなくて、僕個人が松江市に移住したケースとして捉えてくれるとうれしいのですが、そう思っています。


移住イベントでは「お酒と食事のことしか伝えない」


モンスター・ラボ モンスター・ラボ島根開発拠点のブログ「しまもん」 羽角さんの投稿より


―島根県からの依頼もあって「移住イベント」に登壇されていますが、そこではどのような視点で「松江市の魅力」を話されるのでしょうか。

基本的に開発の話や「Rubyの街」という話はせず、話の中心は食べ物・酒の魅力など街のことだけ。そこに共感してくれる人は移住しても楽しめるはずですが、開発者コミュニティにおける人とのつながりや「Rubyの街」という部分が前面に出てくる人は、東京との比較で悩むんじゃないですかね。

―やはり「暮らし」の話を軸にしているのですね。具体的にはどういう話をするのですか?

松江市は、全国に12しかない現存天守がある城下町の一つです。城下町なので地域の文化が発展していて、お茶、着物、伝統的な工芸も残っています。文化があるので食事やお酒もおいしいですし、土地柄おいしい魚が適切な値段で手に入る。それに、東京や関西とのアクセスが良くないからこそ地産地消の傾向が残りやすく、小さいながらもある程度の経済圏が存続し続けているように思います。人口は少なくても、生活に必要なものが身近な地域で手に入るのです。

―松江市の魅力は文化・経済の両軸で成り立っていて、そこに仕事の魅力も加わることでバランスの良い生活になるのですね。最後に、移住してから変わった、生活と価値観について教えてもらえますか?

生活の面での変化はやはり大きいですね。移動が電車から路線バスや自転車、徒歩に変わり、通勤が楽になりました。東京はやっぱり人が多すぎますよね。あとは、知り合いから野菜をもらえるので、野菜を買わなくなりました。近所にある宍道湖の周りを、気晴らしに散歩ができるのも気持ちがいいです。

生活が豊かになったとともに、仕事も充実しています。「エンジニアだから、場所に縛られない働き方ができるだろう」という考えは確信に変わりました。価値観は変化していませんが、見え方は変わりましたね。仕事はいい意味で、変化があまりないんじゃないでしょうか。

これからはRuby on Railsの開発者として技術を研磨しつつ、地域と取り組むことができているIoTデバイスの開発も続けていきたいと思っています。


移住の本質にあるのは「バランスの取れた人生の選択」



Rubyの街としてIT企業の誘致とIT人材の育成に力を注ぐ一方で、歴史や文化的な魅力に溢れる島根県松江市。古いものの価値を認め、新しい文化をつくりあげていくことにやりがいを感じる20代のビジネスパーソンにとっては、とても魅力的な環境に映ったのではないでしょうか。

2014年に松江市に移住されてから、すでに3年以上暮らし続けている羽角さん。自分が長く暮らしてきた地域を離れて、地方都市で働く選択をしたことは、結果としてとても充実した人生をつくっているようです。

印象的だったのは「最先端の技術の刺激を求める人は、小さな地方都市には合わない」という言葉だったのではないでしょうか。羽角さんはインタビューの中で何度も「刺激を求めるなら東京でいい」という話をしていました。「地域活性化」「地方移住」など、地方での働き方に魅力を感じている方は、自分が求める理想が「暮らしとの両立」なのか、「刺激のある仕事」なのか、を今一度じっくりと見極めてみませんか。そこから導きだされる答えをもとに、本当に自分らしい働き方をかなえる選択を考えてみれば、おのずとあなたが輝ける場所が見えてくるかもしれません。

(取材・文:大沢俊介/編集:東京通信社)

識者プロフィール
羽角 均(はすみ・ひとし)
モンスター・ラボ島根開発拠点 エンジニア。2014年7月、モンスター・ラボ島根開発拠点開設と同時に島根へIターン移住。Webサイト開発や松江市の地元酒蔵とのIoTデバイス共同開発をはじめ、業務外でも日本酒の飲み歩きイベントを企画するなど、地域に根ざした「IT×地域社会」を軸とした活動を行っている。

※この記事は2018/01/15にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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