カルチャーから“競技”へ。オリンピックにも採用されたエクストリームスポーツ、スケートボードの魅力

ストリートカルチャーの中で生き、何十年も前から根強い人気を持つスケートボード。カッコイイ・魅せるものとしてカテゴライズされてきた“スケボー”は、今までファッションやカルチャーの中にその存在を潜ませていました。

カルチャーから“競技”へ。オリンピックにも採用されたエクストリームスポーツ、スケートボードの魅力

ストリートカルチャーの中で生き、何十年も前から根強い人気を持つスケートボード。カッコイイ・魅せるものとしてカテゴライズされてきた“スケボー”は、今までファッションやカルチャーの中にその存在を潜ませていました。

しかし2020年に開催される東京オリンピックから新たな種目として追加されたことで、今ではスポーツとしても大きな注目を浴びています。今回はオリンピック選考委員の1人であり、スケートボード専門店・fiftyfifty Skateboard Shopを構える冨田誠さんにスケートボードの魅力や歴史について伺いました。

スケートボードの40年以上続く長い歴史を振り返るだけでなく、これから始めてみたいと思っているアナタに、ボード選びや滑り方の基本についてもご紹介します。

オリンピックの影響で変わった、スケートボードの見方


――遡って1950年代、“波のない場所でもサーフィンを楽しめるように”と始まったのが、スケートボードの誕生といわれています。その後、1976年にフロリダで世界初のスケートパークが設立されたことにより、若者の間で急速にスケートボードは広まっていきました。

日本では1960年代にこのサーフカルチャーを受け一度目のブームの波が押し寄せます。冨田さん自身はいつから、どんなきっかけでスケートボードを?


「僕がスケートボードを始めたのは今から約30年前、13歳のころでした。1980年代はスケートボードがブームだったんです。当時は第3次スケートボードブームと呼ばれ、空中を飛ぶオーリーやデッキを回転させるキックフリップのようなトリック(技)が人気でした。

あのころは『Fine』や『宝島』といった若者向けのファッション・カルチャー系の雑誌が、アメリカをはじめ海外のカルチャーを強く押し出していて。その中でスケートボードが紹介されたことから若者の間で火がつき、ファッションみたいな感覚で広まっていきました」

――音楽やファッションとも密接した関係を持っていますよね。スケートボードはどのような変遷を経てきたのでしょうか? 80年代から現在までのスケートボードの歴史を振り返って教えてください。

「80年代までタイヤの幅が65mmだったものが、90年代に入って半分の約30mmに変わっていきました。それに伴い、スケートボードのスタイルもガラッと変化します。

80年代は道をただ走る(滑る)スタイルが主流だったのが、90年代になってトリックを追い求める時代へと変化し、2000年代からはその両方が人気に。今は昔に比べてボードの種類も豊富にそろい、滑り方もクリエイティブになったので、楽しみ方の幅がぐんと広がっていると思います」

――90年代以降はエクストリームスポーツがテレビコマーシャルなどで頻繁に取り上げられ、その斬新な映像に若者は心を奪われました。

スケートボードを楽しむ人たちの意識は、どのように変わってきましたか?

冨田さんが店主を務めるfiftyfifty Skateboard Shop。お店の中を見ているだけでも面白い!



「僕はお店を運営する傍ら、10年前からスケートボードスクールを開いていろんな方に乗り方を教えてきました。以前は、ほどほどにうまくなればいいや…といった生徒が多かったのですが、最近は『プロを目指しているのでガッチリ教えてください!』っていう生徒が増えてきましたね。2020年のオリンピック競技に選ばれた影響なんじゃないかなと思っています」

当時は少し尖ったイメージを持たれていたスケートボードですが、スポーツとして、その見方は大きく変わろうとしているようです。

プロを育てる環境を!


――2016年8月、スケートボードがオリンピックの新種目として決定しました。30年間スケートボードと共に人生を歩んできた冨田さんは、どのような思いを持ったのでしょうか。


「発表の前から『決まるだろう』と思っていました。2020年のオリンピックでスケートボードが種目に決まったこと、その先の2024年のロサンゼルスオリンピックでは本場ということもあり、今後さらに大きな盛り上がりを見せていくんじゃないかと思っています」

――冨田さんいわく、スケートボードがオリンピック種目として決まったのは良かったものの、選手を育成するにあたり日本は大きな問題を抱えているそうです。その事情について伺いました。

「城南島にスケートパーク(練習場)ができたのが2005年、そのあとは宮下公園や駒沢公園とパークが徐々につくられました。

わずかですが、以前に比べてスケートボードの練習場や楽しむ場所は増えています。しかし、初心者に適応した環境が増えただけで、オリンピックで戦うプロを育成するにはまだまだ設備が整っていません。

2020年、日本代表に選ばれた選手たちは世界を相手に戦わないといけない。オリンピック競技としては初ですし、周囲からの期待が高まる分、選手のプレッシャーも大きい。そこを早く解決したいですね」

――競技としてのスケートボードを日本でもっと根付かせるためには、きちんと練習できる環境を用意していかなければいけないのですね。

「スケートボードがオリンピック種目として決まったことで世間の注目度も上がり、競技人口が増えていくことは目に見えています。選手の育成やプロが練習できる環境を早く整え、それを2020年、2024年と残していきたいです」

そうやって施設が整っていくことで、プロも初心者も同じようにスケートボードを安心・安全に、そしてもっと身近に楽しめるようになるのでしょう。

初心者さん注目! 初めてのスケートボード



ここまで読んで、スケートボードに興味を持った人もいるはず。そこで初めての人向けに、今すぐ始められるスケートボードの基本の「き」から。

今までスケートボードと無縁だった方は、大きいサイズから小ぶりなものまでボードの種類が多くて、どれを選んでいいのか迷ってしまいますよね。まずはボード選びのコツを教えていただきました。


「スケートボードのスタイルは大きく分けて、以下の4種に分類されます。

(1)バーチカル

「垂直」の意味で、スノーボードのハーフパイプのルーツとして知られており、空中でのトリックを競う。

(2)フリースタイル

ダンスの要素が大きく、平らな場所でスケートボードを回したり、裏返したり、横に倒して乗ったりしながら技術を競う。

(3)スラローム

旗門を設置してタイムを競う。国内では160cm間隔のショートと210cm間隔のロングに分けられる。

(4)ストリート

2020年のオリンピックにも決まった競技で、セクションを(障害物を)使用し技の難易度を競い合う。



バーチカルは3.9mある高い位置から下って、大きくジャンプする滑り方です。ある程度大きくて安定感のあるボードが向いています。フリースタイルは平面のフィールドを滑って、ダンスのようにクルクル回ったりして技を魅せるスタイルなので、小回りが利くように小さいボードを選ぶと良いんです。

自分がどんなスタイルを極めたいか決めた上で、ボードを手にしてみてくださいね」

初めてスケートボードに挑戦する方は以下の方法から始めてみましょう。

(1) ボードの上に乗る。

つま先が進行方向に向くように、前方のビス(留め具部分)に片足を乗せます。

(2) 体重を乗せる

後ろ足を地面についた状態にして、重心は前足に置いたまま、後ろ足を真後ろにまっすぐ押し出してみます。

(3) 進む

後ろ足で軽く地面を蹴って、まずはゆっくりと進みましょう。

(4) 止まる

重心をボードの中心に保ったまま、後ろ足を地面に降ろします。このとき、後ろ足でブレーキをかけるように止まるのがポイント。



「慣れてきたら重心を移動させ右や左へ曲がったり、軽い坂道を下ってみたり、スケートボード本来の走る楽しみを感じてみてくださいね」

何事も基本が大事。滑って転ぶと痛いし怖い、そんな方は練習の前に転んだことを想定した受け身を覚えておくと、怖いという先入観が緩和されるそう。大きな公園には練習施設があるので、まずはそこで講習を受け、基礎をきっちり身につけましょう。

くれぐれも事前に人や車の通らない場所かを確認し、しっかり注意を払ってから練習をしてください!

※編集部は安全を確認の上、取材を行っています。

ここで冨田さんの滑りっぷりをご堪能ください!


近づいてきた!


見よ!この巧みなボードさばき!


颯爽と風をきる冨田さんは、爽やかで本当に楽しそう!



「スポーツ全般にいえることですが、特にスケートボードはけがをするリスクが他のスポーツに比べると高かったりします。しかし苦労した分、技を習得したときや、思い通りスムーズに滑れたりしたときは、なんともいえないうれしさがこみあげますよ。

ボードそのものはファッション面での評価も高く、デザインもカッコイイ。ポップなものやクールなもの、見ているだけでも楽しくなるさまざまなデザインがあります。スケートボードの魅力は滑るだけじゃなくて、多角的に楽しめるところにあるんです」

新しい趣味として始める、スケートボード


大人も子どもも世代を超えて楽しめるスポーツとして、いま浸透しつつあるスケートボード。一人でも友達とでも家族とでも、新たなコミュニティーの場所として、また、新しい趣味のひとつとして、あなたも始めてみてはいかがでしょうか?


(取材・文:真貝聡/写真:西田周平)

識者プロフィール
冨田誠(とみた・まこと)
2000年よりスケートシューズGLOBE輸入代理店の日本支社で働き、日々全国のショップとコミュニケーションをとっているうちに、夢である自身のスケートショップオープンへの願望が強まり、fiftyfifty Skateboard Shopを2003年地元大森にオープン。現在も切り盛りする傍ら、日本スケートボード協会競技委員も担当。毎月、第三日曜日は城南島海浜公園で、13時からスクールを開講している。初心者:¥500円(保険料含む)、プロスクール:¥3000円/予約制(保険料含む)。

※この記事は2017/05/26にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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