20代から始める、計画的な資産運用。財形貯蓄の仕組みとメリット

昨今は終身雇用や年功序列の崩壊、年金不安などが重なり、20代のころから計画的な資産形成が求められています。

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20代から始める、計画的な資産運用。財形貯蓄の仕組みとメリット
昨今は終身雇用や年功序列の崩壊、年金不安などが重なり、20代のころから計画的な資産形成が求められています。

そこで活用できるのが、企業に勤める従業員に対する福利厚生制度のひとつ、財形貯蓄(ざいけい・ちょちく)。会社に財形貯蓄制度があるから、または周りの人に勧められたので何となく、といった理由で利用されている方もいるのではないでしょうか。働く人のために国が用意した財形貯蓄は、20代のビジネスパーソンもぜひ知っておきたい資産形成の選択肢のひとつ。

財形貯蓄とは一体どのような制度なのか、今回はその仕組みや詳細について社労士の榊裕葵さんが、20代の読者に分かりやすくお伝えします。


財形貯蓄ってどんな制度?


財形貯蓄は正式には勤労者財産形成貯蓄制度といい、昭和46年に制定された勤労者財産形成促進法に基づいて運営されています。

会社で働く人はこの制度を利用することで、事業主や国の支援を受けながら、退職後の生活の安定、住宅の取得、その他の財産形成の目的として積立型の貯蓄をすることができます。

ただし、残念ながら会社で働く人全員がこの制度を利用できるわけではありません。制度を利用できる大前提として、自分が勤務する会社が財形貯蓄の制度を導入していることが必要です。ですから、財形貯蓄に興味を持った方は、まずは自分の勤務先で財形貯蓄制度が運用されているかを確認してみましょう。


財形貯蓄の始め方


勤務先で財形貯蓄制度が運営されていた場合、実際に財形貯蓄を始めるにはどうすればいいのでしょうか。

一般的には、職場の人事や福利厚生の担当者に財形貯蓄を始めたいことを申し出ると、必要書類を交付されますので、この書類に自分の住所・氏名などの個人情報、始めたい財形貯蓄の種類(詳しくは後述します)、積立額などを記入して会社に提出します。

そうすることで本人の申し出た内容に沿って給与や賞与から積立金が天引きされ、会社経由で積立先の金融機関に積立金が払い込まれます。なお、積立先の金融機関や金融商品(定期預金・公社債・生命保険・株式投信等)は、会社が用意した選択肢の中から本人が選ぶことが可能です。

また、財形貯蓄の積立内容を変更する場合や解約する場合も、会社経由で手続きをすることになります。


財形貯蓄の種類と特徴


財形貯蓄は貯蓄の目的によって「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形在宅貯蓄」の3種類があります。表で比較しながら全体像をつかむと分かりやすいので、まずは下表に目を通してみてください。

一般財形貯蓄 財形年金貯蓄 財形住宅貯蓄
貯蓄の目的 制限無し 老後資金 住宅取得・改築
複数契約の可否 可能 年金・住宅それぞれ1人1契約のみ
利用可能年齢 制限無し 満55歳未満
積立方法 給与または賞与(給与+賞与も可)からの天引き
積立期間 3年以上 5年以上 5年以上
(住宅購入の場合は短縮可)
中途解約 1年経過後は解約自由 年金以外の目的で解約する場合は全部解約扱い 住宅取得目的なら一部解約可だが、それ以外は全部解約扱い
利息にかかる税金 20%の源泉分離課税
ただし、2037年12月31日までは、国税に 復興特別所得税として0.315%が付加
元利合わせて550万円までは非課税
(目的外の中途解約の場合はさかのぼって課税)

一般財形貯蓄は目的に制限なしと緩やかな制度になっていますが、税金の優遇などはありません。逆に財形年金貯蓄と財形在宅貯蓄は利用目的が決まっており、積立期間が長いなどの縛りはあるものの、元利合わせて550万円までは利息が非課税になる優遇措置が受けられます。



いずれの財形貯蓄制度も、給与や賞与からの天引きによって、働く人の資産形成を助けるという制度の骨格自体は共通ですので、利用する場合は目的に合った財形貯蓄制度を検討しましょう。


財形貯蓄のメリットとデメリット


財形貯蓄のメリットは以下の4つです。

1.給与天引きのため半強制的に貯蓄ができる


自分で手取りの一部を貯蓄していくことも可能ですが、自分の銀行口座に入金されてしまうと、外食やレジャーなどでついつい消費してしまうこともあるかもしれません。

しかし財形貯蓄では給与から天引きされて自動的に貯蓄に回されますので、いちど契約をすれば、意識せずとも計画的に貯蓄が積み立てられるようになります。

2.非課税枠や優遇金利のメリットを受けられる


前述したように、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄においては元本に対して550万円までの非課税措置が受けられ、金融機関によっては財形貯蓄に対する優遇金利を設定している場合もあります。

3.財形貯蓄を行っていると「財形住宅融資」が受けられる


財形住宅融資とは、財形貯蓄(一般・年金・住宅問わず)を1年以上行っている人が住宅を取得する際、一定の要件を満たせば財形貯蓄残高の10倍(最高4000万円)まで融資を受けられるという制度。

財形住宅融資は「長期固定金利住宅ローンのフラット35と併用できる」「5年固定金利だが融資実行時ではなく申込時に当初5年間の金利が確定する」「子育て世代や中小企業勤務者の場合は優遇金利が適用される」など、さまざまなメリットがあります。

4.会社によっては奨励金が出る場合がある


財形貯蓄は法律で定められた基準に基づいて会社ごとに制度が設計されますが、会社によっては財形貯蓄を奨励し、社員の資産形成を助けるために奨励金を出している場合があります。この奨励金は積立額の1%~5%程度の場合が多いようですが、低金利が続いている現状においては、資産形成の大きな助けになることでしょう。

デメリットについては2点あります。

1.保険型や株式投信型の財形貯蓄の場合、元本割れのリスクがある


保険型の場合は短期間で解約した場合、元本割れします。株式投信型の場合は運用がうまくいけばリターンが期待できますが、市況が悪化した場合には元本割れする場合があります。

財形貯蓄は「貯蓄」という名前がついているので元本が保証される印象を持っている人が多いのですが、積立先の金融商品を定期預金以外にした場合には、元本割れのリスクがあることを忘れないようにしましょう。

2.機会損失


上記のようなリスクのない金融商品で財形貯蓄を行う場合、「定期預金で積立を行う」ことになりますが、通常の定期預金よりは優遇されるとはいえ、金利は限りなく0%に近い水準です。

若き20代のビジネスパーソンは「時間」という資源を持っていますから、株式や外貨などに投資をして長期運用でリスクを分散させながら高いリターンを目指すことも可能なので、限りある手元資金を低金利の財形貯蓄に回すということは、機会損失という意味でデメリットといえるかもしれません。

もちろん、20代だからといって全ての資金をハイリスクな金融商品に突っ込んでよいというわけではありませんから、さまざまな金融商品について学び、自分なりに納得のいくポートフォリオを構築していく必要があります。そのポートフォリオを構成する金融商品の選択肢の1つとして、株式や投資信託と同様、財形貯蓄も検討に値するはずです。


退職や再就職をした場合はどうなるの?


財形貯蓄は会社単位で運用されている制度ですので、原則としては退職時に払い出しを行うことになります。ただし再就職の予定がある場合は、早急に払い出しを行う必要はありません。

転職先の会社でも財形貯蓄制度を運用している場合は、2年以内であれば前職で始めた自分の財形貯蓄の積立金を移管することができます。財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄の場合は、利子の非課税メリットも継続します。


まとめ


低金利が続いている現在、収益性という点では財形貯蓄は金利の高かった時代ほどメリットは大きいものではないかもしれません。

しかし、計画的に天引きで積立が行える、住宅取得の際の融資が受けられる、会社から奨励金が受けられる場合がある、といった収益性以外の部分でのメリットも少なからずありますので、20代のビジネスパーソンの資産形成の選択肢の1つとして、長期的な視点でじっくり検討してみてもいいかもしれませんね。

識者プロフィール


榊裕葵(さかき・ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー
上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。

※この記事は2018/01/24にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
《編集部》

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