20代の「働き方」に必要な2つの指標とは?【仕事のソーシャルデザイン学入門】-「greenz.jp」編集長・兼松佳宏の未来の授業(前編)

現在、鹿児島に移住して、普段は東京のスタッフとSkypeなどでやりとりをしている兼松さん。今回の「未来の授業」もSkypeでインタビューしました!

20代の「働き方」に必要な2つの指標とは?【仕事のソーシャルデザイン学入門】-「greenz.jp」編集長・兼松佳宏の未来の授業(前編)

PROFILE



兼松佳宏/1979年秋田生まれ。CSRコンサルティング会社でアートディレクターとして勤務後、2006年フリーランスとして独立し、ソーシャルデザインのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わる。2010年、「greenz.jp」編集長に就任。2013年2月から鹿児島に移住。

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兼松佳宏の未来の授業<時間割>



1.20代の「働き方」に必要な2つの指標とは?-仕事のソーシャルデザイン学入門

2.拠点を東京から鹿児島へ、自分のほしい未来に近づくためには?-働くカンキョウ学

毎回、さまざまなジャンルの次世代を担うエキスパートを講師に迎え、来るべき未来への基礎体力を養成する、20代のための授業。第5回目の講師はソーシャルデザインのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さん。「greenz.jp」が立ち上がった経緯や活動内容から見える仕事のソーシャルデザインとは? そしてグッドアイデアを実践する人たちに接してきた兼松さんが考えるこれからの働き方とは?
現在、鹿児島に移住して、普段は東京のスタッフとSkypeなどでやりとりをしている兼松さん。今回の「未来の授業」もSkypeでインタビューしました!

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“社会的活動”のカタいイメージを払拭したかった


--前の部署では、どのような仕事をなさっていたのですか?

「20歳のころに参加したスカベンジャーという活動*が衝撃的だったんです。FINAL HOMEというブランドの服をユニフォームにして、ラジオを担ぎながらごみ拾いをして街を練り歩くというものだったんですけど、それがすごく面白かったんですね。その当時、ごみ拾いって楽しいイメージを持っていなかったんですが、そこにクリエイティブの視点が加わるとこんなに楽しいものになるんだなと。

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next_0001_interview1greenz.jpを始める前、2004年の屋久島旅行の一コマ。「文章を仕事にすること」を決意した思い出の場所。



それをきっかけに、僕自身もデザイナーとして、コマーシャルな仕事だけじゃなく、社会的な課題の解決のために自分のクリエイティブを生かしたいと思ったんです。」

*スカベンジャー活動 … 街路を歩き、あるいは河川、里山など必要な場所に参集してごみを拾い、分別・廃棄する活動のこと。スカベンジャーは「ごみをひろう人(街路清掃人)」。

社会でマイナスとされていることをプラスに転換する それを楽しく、真面目にやっていきたい


--社会的な課題に対して、クリエイティブな視点で解決するというのがソーシャルデザインということなのでしょうか?

「グリーンズの本では『社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること』と定義しています。いわば、マイナスをプラスにすること、そして、それを持続できるようにするということです。といっても「ソーシャルデザイン』という言葉はとても広い概念なので、それぞれの定義があっていいと思っています。

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グリーンズ編集部による著書。国内外のさまざまなソーシャルデザイン事例が収録された、未来の社会をつくるためのヒント集。



肝心なのは、「どんな思いを込めて、その言葉を使っているのか」ということ。ソーシャルデザインはあくまで、ほしい未来をつくるための手段なんです。ある人にとっては、「日本の民主主義を何とかすること」かもしれないし、誰かにとっては、「どうやったらお父さんのたばこをやめさせるか」を工夫することかもしれない。そこに共通するのは、「もっと素敵な社会で暮らしたい」という根源的な欲求なのかもしれません」

--「greenz.jp」はそんな読者のために、プロジェクトの立ち上げ方やアイデアのヒントを伝えていますよね。

「そうですね。いま月間読者数は15万人ほどなのですが、そんな思いのある人たちのよりどころでありたいなと思っています。取材先だけでなく、読者のみなさんも主役。記事を読んだ方が自発的に動き出したくなるように、編集面では心掛けるようにしています」

--そもそも「greenz.jp」立ち上げの経緯を教えてもらえますか?

「2006年に当時お世話になっていたNPO法人BeGood Cafeのシキタ純さんから、『メディアを立ち上げたいから、Webデザインをお願いしたい』と声を掛けてもらったんです。僕がフリーになって最初の仕事の一つでした。
かつての『Olive』のように、メディアは価値観を共有する強いコミュニティをつくり出すことができますが、当時は“環境”や“ソーシャル”がテーマの面白いメディアってあまりなかったんですよね。いっそ自分が読みたいウェブマガジンをつくるくらいの気持ちで関わるうちに、どんどん編集面でも口を出すようになって今に至る……という感じです」

--「greenz.jp」は今NPO法人グリーンズが運営していますが、株式会社ビオピオが運営していた時代もあるようですね。企業とNPO、それぞれで働くことの違いってなんだと思いますか?

「働き方や仕事の内容は実際そんなに変わらないと思いますが、僕たちのスタンスをより明確に伝えるためにNPOを選択しました。

今は『greenz people』*という寄付会員を募っているのですが、予算の使い道も公開するなど、できる限り透明な方がすっきりした気持ちで仕事ができると思ったんです。いろんな方を巻き込んでグリーンズは成り立っていますが、みんなが納得して関わってもらうには、何よりコアメンバーである僕たち自身のあり方が問われますしね。これは、企業とNPOの善しあしの話ではなく、どの形態がしっくりくるのかを突き詰めるのがいいのでは?ということです。

余談ですが、『非営利』って否定語から始まるのが残念だなあと思っていて。より大きな利益のために活動する企業を海外ではFor Benefit Organizationと呼んだりするみたいですが、どちらかというとそのイメージが近いですね。例えばウェブサイトをリニューアルするには内部留保も必要ですし、事業を回すためにしっかり利益をあげることは当たり前ですが大切だと思います」

*greenz people … greenz.jpの記事配信を支えてる個人の寄付会員のこと。会費は1年間で6,000円(1カ月あたり500円)/9,000円(1カ月あたり750円)/12,000円(1カ月あたり1,000円)の3種類。

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仕事へのモチベーションは「手応え」と「納得感」の指標化でつくられる


--肌感として、今の20代は「greenz.jp」で取り上げられるような「ソーシャルデザイン」活動に関心を持っていたり、能動的に無償でも社会のために役立つことがしたいと思っている人が多いように思います。その一方で、会社で追いつめられるまで働かせられる人も増えていますよね。このギャップってなんだと思いますか?

「ひと言で言えば、仕事をする人間とアサインされたタスクがどれくらいピッタリはまっているかどうかだと思います。誰でもできるような仕事とその人にしかできない仕事があるとして、どうやって後者の仕事を見つけていけるのか。そこにじっくり時間をかけている組織は、楽しそうな人が多いような気がしますね。
もちろん、前提として自分が何をしたいのか整理する必要はありますが、ソーシャルデザインの文脈ではそういう居場所を見つけやすい、ということはあるのかもしれません。」

--20代が「働くこと」に対して求めているものも変わってきている印象もあります。

「そうですね。よく言われることですが、高度成長期のころは『憧れのマイホーム』のように共通の神話をみんなで共有していたんだと思います。それはそれで幸せだったのかもしれませんが、リーマンショックや3.11などの大きな転換期を経て、そうではない可能性が現実になってきた。
大きな神話を信じて、自分にちょっと嘘ついて無理して働くのではなく、自分の生き方や大切にしたいことを見つめ直す人が増えたのではないでしょうか。実際に2008年と2011年に、僕たちのサイトへの訪問者数が倍増しました。」

--社会全体が是としていた価値観が崩れた今、何を頼りに生きていくべきなんでしょうか?

「確かな手応えと納得感かなと思います。働き方や生き方の選択肢が増えた分、一つ一つの選択がますます大きい意味を持ってくる。そのプロセスで何を手応えとして得たのか、何が納得がいって、何が納得いかなかったのか、余白の時間をきちんと持って振り返ることが重要になってくると思います」

-- 一つ一つの仕事の役割や選択肢に対して、手応えや納得感があるかを自問して、答えを見つけていかない限り、働くことは苦になってしまいそうですよね。

「その答えって、自分ひとりで見つける必要はなくて、気持ちよさそうな流れに乗りながら、社会に関わる過程でだんだんと見つかっていくものだと思います。そんないい縁に恵まれた人ほど、自分ごととして取り組みたいテーマを見つけられる確率が多いのかもしれませんね。
例えば、子どもの日常品に日本の伝統を吹き込む0から6歳の伝統ブランド『aeru(和える)』発起人の24歳の矢島里佳さん*1や、『ハローワーク』ならぬ『ハローライフ』という生き方に近い仕事を見つけられる場所をつくった27歳の塩山諒さん*2なんかは、今の時代を象徴している人たちだと思います。ユーモアたっぷりなのに程よくストイックで、とても尊敬している二人です」

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*1 aeru(和える) … 「子どものころから日本伝統のホンモノに触れてほしい」という思いからつくられたベビー・キッズブランド「和える-aeru-」[マイプロSHOWCASE]

*2 ハローライフ … 仕事を通して人生に出会おう。生き生き働く人のコミュニティを育む、仕事ライブラリー「ハローライフ」が大阪にオープン!


--10年後、20年後などの近い未来に、今の20代の人たちの「働き方」は変わっていくと思いますか?

「まだ壮大なシャッフルのど真ん中なので、思い通りにならずに、大変な思いをしている方もいると思いますが、同時に自分が動き出せば何かが変わるという手応えも知っているのが今の20代だと思います。10年後、20年後には、今生まれた何かが新しい当たり前として定着しているかもしれないと思うと、とてもワクワクしますね。

それくらい時間が立てば世代交代も進んでいるので、職場の雰囲気も上司との関係もガラリと変わっているはず。会社内にいながら起業家精神を持つソーシャルイントレプレナーがたくさん出現したり、仲間と起業する人も増えて雇用を生み出すようになったりすると、フリーランスという働き方そのものが珍しくなっているかもしれませんね。

僕も鹿児島に引っ越して0歳児の子育て中で、フリーランスのように空間と時間を自分らしくつくれていますが、それが実現できるのもNPO法人グリーンズという組織のメンバーだからこそだと思っています。一人よりも、やっぱり仲間がいるのは大きいなあとあらためて感じます。

いずれにせよ、働き方を考える上で大切なのは「自分のほしい未来」を貫くこと。それは「雑誌で紹介されていたから」みたいな小さな欲望ではなく、もっと大きなものです。それに気付くためには、先ほどの余白の時間のように心を整える時間が必要ですよね。だから10年後、20年後には、働く時間のあいまに静かな瞑想の時間を持つことが当たり前になるといいなあと思っています。」

本日の授業のおさらい



1.真面目なことにも「クリエイティブ」な視点が加わると、楽しく、面白くなる
2.熱意と覚悟をもって仕事に取り組めば、支援してくれる人はきっといる!
3.自分の「納得感」や「手応え」を大事にすることが、未来の働き方のスタンダード



※この記事は2013/09/04にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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