【連載】“ラビジ”のススメ┃上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは

第1回目は、『人生は攻略できる』(ポプラ社)。どうやって仕事をしていけば幸せになれるんだろう?自分らしく生きるとは……? 『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)の著者でもある、橘玲氏にお話をうかがいました。

はたらく ライフハック
【連載】“ラビジ”のススメ┃上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは
  • 【連載】“ラビジ”のススメ┃上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは
  • 図版などビジュアルでも楽しませてくれる本書。橘氏から若者たちへの人生のアドバイスが詰まっている
  • 「世界はジモティでできている」と語る橘氏は、アメリカのジェファーソン高校のセックス相関図でこれを解説。ここにも人生を攻略するヒントが
  • 若いからこそ選択肢が多い。幸福になるか、不幸になるか、人生を攻略するメソッドは実はたくさんあるというのが橘氏の考え
  • 世界と日本のビジネスマンの違いを解説。ここに大きな違いがあることが分かる
  • クリエティブな仕事でもさらに大別できる。詳しくは本書を手に取っていただきたい
  • 自分にとっての幸せは何かを考える。あくまで選択肢を与える橘氏の文体も読みやすい理由のひとつ
  • 【連載】“ラビジ”のススメ┃上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは
「ライトノベル」が「ラノベ」なら、気軽に手に取れるビジネス書は「ラビジ」。カタすぎるビジネス書はハードルが高いけど、「なるほど、これなら自分にもできそうだ」と、はたらく上ではもちろん、人生のヒントが詰まった1冊をご紹介するのが本連載「“ラビジ”のススメ」です。

第1回目は、『人生は攻略できる』(ポプラ社)。どうやって仕事をしていけば幸せになれるんだろう?自分らしく生きるとは……? 「不愉快な現実」を鋭く分析してベストセラーとなった『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)の著者でもある、橘玲氏にお話をうかがいました。


人生を攻略するには「自由に生きること」!



図版などビジュアルでも楽しませてくれる本書。橘氏から若者たちへの人生のアドバイスが詰まっている


――「自由に生きる」という言葉はとても魅力的な響きなのですが、それが人生を攻略することに、どうつながるのでしょうか?

まず前提として、今の時代は嫌なことがどんどんなくなってきています。社会が発展して便利なものが増えて、私たちは人類史上初めて、「とてつもなく豊かで、平和な時代」を生きることになりました。

「好きな人と結婚する」「好きなように生きていく」「自分の好きな仕事をする」という自由=リベラルな社会が成立したのは、せいぜいこの50年で、人類史の99.9%で、人々は「自由」など考えたこともなく、生まれ、大人になり、子どもを産み育て、死んでいきました。これはとてつもなく大きな変化です。

――リベラルな社会になると、どうなるんですか?

かつての身分制社会では、「武士」「農民」のような身分が分かれば相手との付き合い方が決まるので、人間関係はシンプルです。それが近代になって、一人ひとりが固有の権利(人権)を持つことになった。これはもちろん素晴らしいことですが、それによって人間関係はものすごく複雑になりました。

――自由になっているはずなのに、不自由さを感じてしまうんですね。

旧石器時代の人は、50人からせいぜい150人程度の小さな集団で暮らしていたと考えられています。話をするのはいつも同じ人たちで、知らない人と出会うことは一生のうちに何度もなかったでしょう。

今では毎日何人、何十人もの初対面の人とやりとりするようになりましたが、私たちの脳はこうした環境に合わせて「設計」されていません。「人情(人間関係)が薄くなった」と嘆くお年寄りがたくさんいますが、これはまったく逆で、人間関係がありすぎてみんな苦しんでいるのです。

民族、宗教、文化を問わず、世界の大半が故郷と友達を核とした“ジモティ”で生きているのは、それが人間の本性にとって心地いいからです。しかし現代の「とてつもなく豊かな社会」では、濃密な人間関係を拘束だと感じる人たちが出てきた。


「世界はジモティでできている」と語る橘氏は、アメリカのジェファーソン高校のセックス相関図でこれを解説。ここにも人生を攻略するヒントが
「世界はジモティでできている」と語る橘氏は、アメリカのジェファーソン高校のセックス相関図でこれを解説。ここにも人生を攻略するヒントが


――なるほど。では“自分らしさ”を見つけるためには、どうすればよいのでしょうか?

人は好きなことをしているときに“自分らしさ”を実感し、得意なことを褒められるとそれを好きになります。得意なことは好きなことであり、好きなことは自分らしいことである――こう考えることも「人間の本性」なのでしょう。

世の中には“やればできる”という人がいるけれど、これは逆です。好きでも得意でもないことはやってもできないし、そもそもやる気すらおきません。

成功に必要な「圧倒的な努力」ができるのは好きなことだけです。好きでもないことを無理矢理やらされたら、ほとんどの人は身体をこわすか、うつ病になってしまうでしょう。

――その“好き”というのが見つからないこともあると思うのですが……。

大谷翔平選手や藤井聡太七段のような人はごくわずかです。私を含めほとんどの人は、試行錯誤しながら得意なこと(他人よりうまくできること)を見つけ、それを必死にやっていくなかで「好き」になるのではないでしょうか。

そのためには、若いうちにできるだけトライ&エラーを繰り返すべきです。

――自分の“好き”が分かれば、自由な生き方を選択することができるんですね。

「好きなことをして生きていけるような甘い話があるわけがない」と説教する人がたくさんいます。これもたしかにそうなのですが、生活できないのはお金を稼げないからです。「好きなこと」を見つけたら、次はそれを「マネタイズ(ビジネス化)」しなければなりません。

「“好き”を仕事にする」というのは、「仕事にならない“好き”は単なる趣味」ということです。ここを間違えると、「好きを追求しているうちにどんどん貧乏になる」という悲劇が待ち構えています。

“好き”を仕事にすることは誰でもできるわけではありませんが、その一方で、インターネット(SNS)などのテクノロジーが急速に進歩している今は、自由に生きる可能性が大きく広がっています。これからますます、人生を上手に「攻略」する若い人たちが増えていくでしょう。

若いからこそ選択肢が多い。幸福になるか、不幸になるか、人生を攻略するメソッドは実はたくさんあるというのが橘氏の考え
若いからこそ選択肢が多い。幸福になるか、不幸になるか、人生を攻略するメソッドは実はたくさんあるというのが橘氏の考え



会社が嫌いな日本のサラリーマン!?



――ご著書のなかで、「日本のサラリーマンは世界でいちばん会社が嫌い」とありましたが、それはどういうことですか?

労働者のエンゲージメント(どのくらい会社や仕事に前向きか)を国際比較すると、ほとんどの調査で日本のサラリ-マンは最下位です(※)。10年くらい前までは「(年功序列・終身雇用の)日本的雇用制度が日本人を幸福にした」と言う人がたくさんいましたが、これは大ウソだったのです。

サラリーマンがどんどん会社を嫌いになっているのは、“日本的雇用”が今の時代の価値観に合っていないからでしょう。

データを見るかぎり、中高年の男性サラリーマンは世界(先進国)でもっとも長時間労働しているにもかかわらず、一人ひとりの付加価値(利益)を示す労働生産性はアメリカ人の6割程度しかなく、先進国ではずっと最下位です(※)。

会社に滅私奉公しているのにぜんぜん儲からないのですから、これでは会社を憎むようになっても不思議はありません。

世界と日本のビジネスマンの違いを解説。ここに大きな違いがあることが分かる
世界と日本のビジネスマンの違いを解説。ここに大きな違いがあることが分かる


――“日本的雇用”の特徴とはなんでしょうか?

日本人は、学校や軍隊などの組織(イエ)に所属していないと安心できないんですね。だから、先輩・後輩の上下関係とか、一蓮托生の運命共同体とか、 “年功序列型”の「身分制社会」をつくってしまう。これが日本的雇用です。「パワハラ、セクハラは当たり前」という“おっさん”がいまだにいるのは、会社が軍隊と同じだと考えれば当然です。

でも今では、若い人たちの価値観が大きく変わって、そんな窮屈な組織ではやってられないと思うようになった。こうして「働き方改革」がようやく進むようになり、終身雇用や年功序列は早晩、過去のものになっていくでしょう。

――そんななかで、会社員(サラリーマン)はどうすればいいのでしょうか。

働き方は大きく、1.クリエイター 2専門職(管理職) 3.バックオフィスの3つに分かれます。クリエイターのほとんどはフリーエージェントで、管理職とバックオフィスは会社に属しています。

「テクノロジーの進歩で管理職はいなくなる」と言われますが、現実は逆で、グローバル企業でも管理職が増えているようです。なぜこんなことになるかは、映画制作を考えると理解できます。

監督・俳優から照明や音声のような裏方まで、映画の制作スタッフはみんな「フリー(自営業者)」ですが、こうして出来上がった映画をマネタイズするのは映画会社です。映画を世界中で上映・配信するには国ごとに契約を結ばなければならないし、宗教的・文化的な理由で内容を修正しなければならないこともあるかもしれません。

グローバル化が進みビジネスの規模が大きくなるほど、あらゆるケースや事例に応じて多種多様なマネジメンが必要になるわけです。こうして、フリーエージェント化が進むと同時に会社の管理職も増えていきます。

――バックオフィスはどうなんでしょうか?

バックオフィス(事務系)の仕事は、AIのような機械(ロボット)で代替されるリスクがあります。マニュアル化された作業はコンピュータがいちばん得意ですから。

そう考えれば、バックオフィスではなく専門職としてのスキルを磨くほかありませんが、最大の問題は、日本の会社がそうした人材を育成するようになっていないことです。

――それはどうしてでしょうか?

日本の会社は「ゼネラリストを養成する」という名目で、専門を超えて社内で異動させます。サラリーマンはこれを当たり前と思っていますが、「経理から営業に移った」などと欧米のビジネスパーソンが聞くと腰を抜かすほど驚きます。経理はスペシャリストの仕事で、会社を変わりながら同じ仕事を継続し、スキル(専門性)を向上させるのが当然とされているからです。

そんなグローバルスタンダードの働き方に対して、日本の会社は、素人を専門職に就けて数年で異動させるので、いつまで経っても専門性が身につかず国際競争から脱落してしまいます。

専門的なスキルがないと、50歳になって「あなたの仕事は?」と聞かれたときに「〇〇社です」と会社名を答える“残念な人”になってしまいます。これでは定年で会社を離れたとたん「専門」がなにもない状態になってしまいます。

クリエティブな仕事でもさらに大別できる。詳しくは本書を手に取っていただきたい
クリエティブな仕事でもさらに大別できる。詳しくは本書を手に取っていただきたい



会社にハマらないためには常に動けるようにしておくこと!



――現状を考えると、20~30代の大多数が会社に属していますよね。この人たちが人生を攻略するためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?

「伽藍(がらん)とバザール」で説明すると、バザールは外に向かって開かれた空間で、誰でも商売が始められる代わりにライバルが多い。それに対して伽藍は壁に囲まれた閉鎖的な場所で、参入が難しい分競争率は低い。

日本人はバザールが嫌いで、伽藍の中にいるのが大好きです。そこでは「失敗するようなリスクはとらず、目立つことは一切しないでノルマをこなす」だけでそこそこの生活が保証されます。

――確かに組織にいると、そういう意識が強くなる傾向はあると思います。

いったんこの蛸壺に入ってしまうと、抜けるのがものすごく難しい。学校のいじめ(パワハラ)と同様に、会社にしがみつくしかなければ、いくら罵詈雑言を浴びせても何もできないと思われますから。

こんな悲惨な事態を避けるには、常に選択肢を持っていなければなりません。「いつでも転職できるし、フリーでもやっていける」という社員に対してハラスメントはできません。

先ほどいったように、日本の会社はそもそもスペシャリストを養成するようにはできていませんが、だからこそ、トライ&エラーで「スペシャル」を確立した人が圧倒的に有利になります。

自分にとっての幸せは何かを考える。あくまで選択肢を与える橘氏の文体も読みやすい理由のひとつ
自分にとっての幸せは何かを考える。あくまで選択肢を与える橘氏の文体も読みやすい理由のひとつ


――ご著書にあった「会社は社員が幸せになる道具」という考え方が、生きやすい働き方につながるということですね。

“会社で”どう働くかではなく、会社という場を使って“自分が”どう働くかを考えるべきです。嫌なことを10年もやったら頭がおかしくなってしまう。嫌なことを頑張るように人間はできていませんから。

――こういう時代だからこそ、自分らしい生き方をして幸せになる。そのためには、会社に属していても、いつでも動ける心構えでいるのがいいという気がしてきました。

これから日本も世界も大きく変わっていくのだから、それに合わせて自分も変わっていかなくてはなりません。希少な若者はますます価値が高くなっていくのですから、ポジティブな気持ちで自由な人生を歩んでいってほしいですね。

※ 出典『働き方2.0 vs 4.0』(PHP研究所/著・橘玲)



『人生は攻略できる』
著者:橘玲
出版社:ポプラ社
発売日:2019年3月
判型:四六判
定価:1,620円(本体1,500円)

橘 玲(たちばな・あきら)
作家。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。2006年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補となる。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーとなり、2017新書大賞を受賞。近著に『朝日ぎらい』(朝日新書)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書)などがある。


文/川手優子
《編集部》

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