2018年1月から拡充された「教育訓練給付制度」、キャリアアップにどう活かす?

今回拡充された「教育訓練給付金」も、労働者の雇用を安定させるための雇用保険料を財源とした給付金制度の1つ。どのような変更がなされ、そして20代にとってどんなキャリアアップにつなげることができるのか――

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2018年1月から雇用保険法の一部が改正され「教育訓練給付制度」が拡充されました。

毎月もらう給与明細で雇用保険料が控除されていることは分かるのですが、多くの方は「雇用保険料は失業をしたときに、失業手当を受けるためだけに払っている保険料」という認識を持っているのではないでしょうか。

実はそれだけではなく、雇用保険料は「失業を防ぐ等、雇用の安定のため」のさまざまな給付にも使われています。たとえば、会社を辞めることなく安心して育児休業を取得するための「育児休業給付金」は雇用保険料が財源。介護休業を取得する際の「介護休業給付金」も同様に雇用保険料が財源となっているのです。

今回拡充された「教育訓練給付金」も、労働者の雇用を安定させるための雇用保険料を財源とした給付金制度の1つ。どのような変更がなされ、そして20代にとってどんなキャリアアップにつなげることができるのか――今回は社労士の榊さんとDODAキャリアアドバイザーの坂田奈菜さんのお二人にお話を伺います。

まずは榊さんに、教育給付制度の概要を教えていただきましょう。

教育訓練給付制度ってなに?


この制度は、雇用保険に一定期間以上加入をしている労働者が職業訓練を受けたり、資格試験の予備校に通ったり、通信教育を受けたりなど、国の指定を受けた教育訓練機関を使って自己啓発を行った場合、負担した費用の一部が国から支給されるというものです。

国は労働者が自主的にスキルアップを図ることを促すことで、能力不足やミスマッチによる失業を防いだり、早期の再就職を実現させ、より高い付加価値を生み出せる職に就いてもらうことを期待してこの制度を運用しています。

教育訓練給付制度は具体的に以下の4つのポイントがあります。

(1)教育訓練給付制度にはどのような種類があるのか

(2)どのような人が対象になるのか

(3)どのくらいの金額が支給されるのか

(4)支給申請はどのように行うか

次の項でこれらのポイントをそれぞれ詳しく説明していきましょう。

教育訓練給付制度4つのポイント

 

1.「教育訓練給付制度にはどのような種類があるのか」


教育訓練給付制度には2種類の制度があります。教育訓練給付制度は1998年に誕生し、たびたび法改正が行われてきましたが、2014年に大改正が行われ、現在の「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2本立ての制度となりました。

一般教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を終了した場合に自ら負担した授業料等の一部が支給されるという制度。対象となる教育訓練は、英会話やパソコンスクール、通信教育など比較的手軽に受講できるものを含め幅広くあります。

これに対し、専門実践教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を終了した場合に支給されるというところは一般教育訓練給付金と同じですが、対象となる教育訓練が看護師、美容師、調理師等の専門学校への入学や、税務や会計など実務に直結した知識を学べる資格試験予備校や大学院の講座など、専門性が高く長期間にわたる職業訓練を受ける場合に対象となります。

2.「どのような人が対象になるのか」


対象となるのは、雇用保険の被保険者または被保険者であった人ですが、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金では条件が異なります。

一般教育訓練給付金は、受講開始日現在で雇用保険の被保険者であった期間が3年以上(初めて支給を受けようとする方については1年以上)あることが必要です。ただし、退職者については、退職日の翌日から起算して1年以内(妊娠・出産等の事情がある場合は4年以内)に受講開始しなければなりません。

また、同じ人が短期間に何度も教育訓練を受けることはできないので、前回の訓練給付金を受けてから3年以上経過している必要があります。

専門実践教育訓練給付金は、受講開始日現在で雇用保険の被保険者であった期間が10年以上(初めて支給を受けようとする方については2年以上)あることが必要です。長期間の訓練を受け、給付額も高額になりますので、一般教育訓練よりも条件が厳しくなっています。

退職者の方については、退職日の翌日から起算して1年以内(妊娠・出産等の事情がある場合は4年以内)に受講開始しなければならないことは一般教育訓練と同じですが、前回の訓練給付金を受けてから10年以上経過していなければ複数回受給の対象とならないところは、一般教育訓練よりも条件が厳しくなっています。

3.「どのくらいの金額が支給されるのか」


こちらも、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金に分けて説明しましょう。

一般教育訓練給付金は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費のうち、20%に相当する額が支給されます。ただし、20%相当額が10万円を超える場合は10万円が上限となり、逆に下限としては、4千円を超えない場合は支給されません。

専門実践教育訓練給付金は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費のうち40%に相当する額が支給されます。ただし、40%相当額が1年間で32万円を超える場合は32万円(訓練期間は最長で3年間、最大で96万円が上限)が上限となり、逆に下限としては4千円を超えない場合は支給されません。

また、専門実践教育訓練の受講を終了後、あらかじめ定められた資格試験等に合格した場合はボーナスとして20%が事後加算され、上記40%と合わせると訓練経費の60%(1年間の上限48万円)の支給が受けられることになります。

さらに、退職後に専門実践教育訓練を受ける場合、受講開始時に45歳未満であること、専門実践教育訓練を修了する見込みがあることなど一定の要件を満たせば、専門実践教育訓練給付金とは別に「教育訓練支援給付金」の給付を受けることができます。

この教育訓練支援給付金は教育訓練期間中の所得補償に該当する給付金で、金額は対象となる日1日につき、雇用保険の失業手当日額の50%に相当します。

4.「支給申請はどのように行うか」


一般教育訓練給付金も専門実践教育訓練給付金も、訓練受講者本人の現住所を管轄するハローワークの窓口に必要書類を提出することで申請を行います。

一般教育訓練給付金の支給申請期限は教育訓練の受講修了日の翌日から起算して1カ月以内ですが、専門実践教育訓練給付金は訓練が長期にわたりますので、訓練期間を6カ月ごとに区切り、各期間の末日の翌日から起算して1カ月以内に都度分割申請をします。

なお、専門実践教育訓練給付金の場合、訓練を受ける前の事前手続として、訓練開始日の1カ月前までに、キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、受けたことを証明する資料等をあらかじめハローワークに提出しておかなければ給付金の対象となりませんのでご注意ください。

また、教育訓練支援給付金の受給も受けられる場合は、専門実践教育訓練給付金の手続きをすれば自動的に受給できるわけではなく、別途の支給申請手続きが必要ですので、ハローワークに確認のうえ、抜け漏れのないよう対応しましょう。

2018年からの変更点、変更点における20代ビジネスパーソンへのメリット


2018年1月より、専門実践教育訓練給付金において拡充された4つのポイントについて説明します(一般教育訓練給付金は変更ありません)。

1.支給率の引き上げ


専門実践教育訓練給付金の給付率が50%に引き上げられます。資格試験等に合格した場合のボーナスを加えると、なんと教育訓練経費の70%の支給を受けられるようになるのです。

2.支給上限の引き上げ


年間の支給上限が32万円(資格試験等合格時は48万円)から年間上限40万円(資格試験等合格時は56万円)に引き上げられます。

3.支給対象者要件の緩和


初めての場合を除き、支給要件期間として雇用保険に加入していた期間が3年以上に緩和されることになりました。

また、退職後は1年以内に受講開始することが要件で、妊娠・出産等の事情がある場合に受講開始を延長できるのは4年以内でしたが、これが最大で20年以内まで可能になるという大幅な緩和がなされています。

4.「教育訓練支援給付金」の拡充


専門実践教育訓練の受講中の所得補償である教育訓練支援給付金は、これまで雇用保険の失業手当の日額の50%に相当する額だったところ、80%にまで引き上げられることになりました。すなわち、キャリアチェンジやキャリアアップを目指している人にとって、金銭的な負担のハードルが下がるので、自分が望めば新しい一歩を踏み出しやすくなったということです。

転職やキャリアアップを考えているけど、教育訓練給付制度は本当に役立つ?


ここからはDODA キャリアアドバイザーの坂田さんに、転職活動の際に教育訓練給付制度を活用するときのポイントを伺います。

今のキャリアに対して迷い・不安がある方を適切な方向へ導くためのカウンセリングを行い、希望に見合った求人の紹介から、応募書類の書き方や面接のアドバイス、さらには面接日程の調整まで、一人ひとりのスキルや可能性を見いだし、転職の成功まで1対1で寄り添いサポートする。それがキャリアアドバイザーと呼ばれる“転職サポートのプロ”たちです。

教育訓練給付制度の拡充で、これまでよりいっそう資格取得や能力開発にはげみやすい環境が整備されましたが、他方で坂田さんは「資格取得や能力開発というものに、過度な期待を持つのは禁物です」と釘を刺します。

「キャリアアップやキャリアチェンジの文脈で考えた場合、教育訓練給付制度はあくまで補助的なツールです。たしかに選択するキャリアの幅を広げていける制度ではありますが、だからといって手当たり次第に資格を取得すれば、それが転職の成功に直結すると考えてはいけません」

坂田さんはさらに続けます。

「面接時において、企業の人事担当者が最も注目するのは『それまでの職務内容と自社の事業との親和性』『年齢と自社が用意しているポジションとの親和性』の2点です。

これはあくまで私のキャリアアドバイザーとしての経験からの感覚ですが、上記の2点と資格の有無の比重でいうと、後者はせいぜい2割程度だと思います。例えば30歳の人が履歴書の資格欄にあれやこれやとたくさんの資格を記入していても、それまでの職歴とその資格が“合致”していなければ、その資格が担当者の目に留まることはありません。

専門職へのキャリアチェンジに必須な専門的スキル(エンジニアの情報関連の資格、士業の資格等)は別だとしても、一般的なキャリアチェンジの能力開発で大事なのは、やはり“一貫性”。ご自身の描きたいキャリアがまず先にあり、そのときに必要となるスキル・能力を選択するのが正しい手順だといえるでしょう」

そうした転職時の能力開発のツボを押さえたうえで、転職市場でとくに人気の高いスキルを伺うと……。

「やはり語学系のスキルでしょうか。法人のマーケットニーズでは、TOEICやTOEFLといった英語の資格はたしかに需要が高く、転職で優位に働くことがあります。英語や中国語など、ある一定程度のレベルをクリアした語学系の能力開発を選択して伸ばしたほうがよいでしょう」

教育訓練給付制度の枠組みでは英語スキルの講座も選択できるので、活用を検討してみてもいいかもしれませんね。さらに坂田さんは「意外な資格を持っておくことで『この人、面白そうだな』という印象をつけることができ、それが転職で有利に働くことも」と話します。

「転職では即戦力性の高さが重要なのはもちろんですが、既存の自社リソースでは価値発見できないような、何かしらの『異色さ』あるいは『ユニークさ』を求められることがしばしばあります。『個性をPRできる能力を取得する』という観点で講座やコース探してみるのも面白いのではないでしょうか」

まとめ

 

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変化の激しい今の時代ですが、会社任せではなく自分自身でキャリアプランをつくりあげていくことがこれからも大事になっていくのではないでしょうか。

5年後、10年後の自分を想像したとき、思い通りのキャリアチェンジを実現するためにも、こうした教育訓練給付金や教育訓練支援給付金をうまく活用して、スキルを蓄えておいてみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール


榊裕葵(さかき・ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー
上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。

坂田奈菜(さかた・なな)
企業の中途採用コンサルティング営業を経て、DODAキャリアカウンセラーとして延べ1,000人以上のキャリアカウンセリングを実施。
営業職、販売・サービス職経験者を中心に転職をサポート。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
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※この記事は2018/01/05にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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